グェン・ヴァン・ヴィエット

NGUYEN   VAN   VIET

Profile & Message

2013年 ハノイ土木大学を卒業

2015年10月   母校で開始した日本語学習・就職プロジェクトに参加

2016年9月 鹿児島県の建設会社から内定をもらう

2016年12月 JLPT N3と自動車運転免許を同時に取得

2017年7月        来日

目標を達成するのに時間がかかることは失敗ではなく、諦めることが失敗なのです。ほかの留学生の人の言葉を借りると、“頑張ったけどできない方が良い、頑張らないことの方が後悔する”。だから好きなこと、やりたいことがあればやり続けてください。

プロジェクト参加のきっかけ

子供時代は日本のマンガが大好きで、マンガが生活の中心でした。もう少し、成長すると、忍者や侍、武士が出てくる映画をよく見るようになりました。頭の中では、日本の文化や風景画イメージできるようになり、旅行等で訪れたいと思っていましたが、自分が日本で仕事をして生活をすることは全く想像していませんでした。

卒業から2年後の2015年7月に、将来の仕事に役立つだろうと思い、英語クラスに通い始めました。その時、隣の席になった人が偶然母校の大学の後輩で、日本語を学び、日本で就職するプロジェクトが母校で行われることを教えてくれました。自分の母校でそのようなプロジェクトが展開されるのは初めてだったので、とてもラッキーなことで良いチャンスだと思いました。

ハノイには日本語を学べて仕事も紹介してくれる斡旋会社が沢山ありましたが、多額の費用を払わなくてはなりません。このプロジェクトも同様なのか少し心配でした。しかし、よく調べてみると、このプロジェクトは費用がほとんどかからず、仕事選びのサポートや日本企業で働くことに対するアドバイスをしてくれます。そして、直ぐにインターネットから申し込み、書類選考と面接に合格して、このプロジェクトの最初の60人に選ばれました。ここから、日本との縁が始まりました。

私は既に大学を卒業して仕事をしていたので、夜間のクラスに参加することになりました。また、その時に結婚することを決意しましたが、仕事とプロジェクトと結婚と、これから色々大変だろうなと思いました。

日本語学習の苦労と努力

2015年10月12日、プロジェクトがスタートして、日本語の学習が始まりました。毎週、月~金曜日に仕事を終えてから、クラスに通って日本語の勉強をしました。開始直後は、新しい先生、新しい友達、新しい言語ということもあって、クラスのみんなが興奮していましたが、慣れてくると徐々に参加者の熱も下がっていき、途中で辞めて他の道に進む人もいました。勉強や仕事のプレッシャーから、自分の選んだ道を進むことができなくなったことが理由です。会社の仕事、自分の家族、日本語の勉強、自分も同じ問題に直面していました。


このプロジェクトと同様に日本語を学んで日本での就職を斡旋する会社は通常、高額な給与や必ず就職できる就職保障を宣伝しますが、このプロジェクトは、日本での就職を保障することは一切言わないので、不安になりました。先生やプロジェクトのスタッフに相談すると、「サポートはするけど、結果が出るかどうかは全て自分の努力次第。」と言われました。そして、自分の選んだ道は間違っていたのではないか?という気持ちが芽生えはじめました。しかし、毎日クラスに通い、勉強して、皆や先生と話しをしていると、消極的な考えは辞めて前向きに選んだ道を進んで行こうという気持ちになりました。


会社の仕事と、家族のこと、日本語の勉強をこなすには、時間を有効に使うことが大切でした。仕事をしながら日本語を勉強していたので学習時間は少なく、毎回クラスが終わると、直ぐに宿題をして、仕事中の昼休みには日本語の予習を行いました。毎週土曜日も、午前中は仕事がありましたが、午後はクラスの友達を誘って、大学の図書館で勉強をしていました。そして、そのサイクルを1年間続けました。

チャンスとチャレンジ

日本語の勉強を始めて約4ヶ月が経った頃、日本の企業が大学に来て初めての面接会が開催されましたが、当時の私の日本語能力は、挨拶と自己紹介だけが出来るレベルでした。そ

の後も毎月1回、同様の面接会が行われ、徐々に日本のマナーや、日本語での面接の受け答えに慣れていきました。しかし、面接は何度受けても上手くいかず、クラスの友達は面接に合格して、内定をもらっていました。失敗が重なって、もう諦めてしまうかという気持ちになり、何事にも集中できなくなりました。

他の人と比べても、自分の日本語能力やマナーはそんなに悪くないのに、なぜ自分は合格できないのか分かりませんでした。面接官は、能力ではなく個人的な好き嫌いで判断しているのではないかと悩み、そのことを先生やスタッフに相談しました。「自分の態度が自分の成功を決めるので、自分なりにやればいいんです。面接の時は、決まった答えを言うのではなく、自分の考えや意見を正直に答えればいいんですよ。」と言われ、自分が面接に失敗する理由が分かりました。自分は答えを準備し過ぎていて不自然だったことに気付き、次回の面接の時は今までとは同じやり方をしないように注意することにしました。そして、ついに結果が出る時が来ました。


2016年9月に開催された面接会には、日本の企業6社が参加しました。2回の面接に合格して内定が出ましたが、日本で働く為には、日本語能力N3の合格と自動車の運転免許の取得が必要と言われ、それからの目標は、N3の合格と運転免許を取ることになりました。面接に対する心配が無くなり、日本語の勉強と運転免許の取得に集中できたおかげで、この2つの目標を達成することができました。

来日後の生活と仕事

ビザの手続きなど来日準備に時間がかかり、2017年7月1日にようやく来日しました。現在は南九州にある鹿児島県に住んでいます。そこはベトナムの田舎のように空気がきれいで静かな場所です。

入社して最初の1か月間は、会社規則などの研修をしながら運転免許の切り替えのための勉強をしました。そして2か月目からは現場に配属となり、私はドキドキしながら日本人の先輩たちと働き始めました。その工事現場は会社のオフィスと店舗が入居するオフィスビルで、工事の規模は大きいですが、工事期間が6か月未満と短く、驚きました。この現場は工事期間が短いため、朝早く現場に行き、夜まで働き、そのあと事務所に戻って事務処理をする生活サイクルでした。また、休日を返上してでも工期内に仕事を終わらせる日本の働き方に衝撃を受けました。さらに私は日本人の同僚が話している日本語の意味もあまり理解できなかったので、気持ちが落ち込んでしまいました。

辛くて辞めたいと感じたときには、2年先に入社した2人のベトナム人社員の先輩が積極的に相談に乗ってくれたので、私は初めての現場を乗り越え、仕事の達成感を味わうことができました。そして、日本語力も徐々に上達し、自信を持てるようになりました。私はもっと日本文化や日本人の考え方を理解したいと思い、毎週末、ベトナム人と日本人の先輩たちと釣りやボランティア、買い物、スポーツなど様々な活動を積極的に行っています。いろいろな活動を通して、みんなとの交流の輪が広がり、たくさんの人と出会うことができました。

メッセージ

日本にまだ来たばかりなので経験は少ないですが、今までの様々な経験から感じたことを日本へ行くことを夢見ている皆さんに伝えます。大切なことは自分の目標を決めて、セミナーやジョブフェアーなどに参加してチャンスを掴むことです。そして、何があっても諦めずに目標を追いかけ続けてください。目標を達成するのに時間がかかることは失敗ではなく、諦めることが失敗なのです。ほかの留学生の人の言葉を借りると、“頑張ったけどできない方が良い、頑張らないことの方が後悔する”。だから好きなこと、やりたいことがあればやり続けてください。若い時期を無駄にせず、たくさん仕事や人と交流をすること、限界までチャレンジして苦労することは、あとで振り返ったときに充実していたと感じられるはずです。

鹿児島県、2018年1月