グエン ・  トゥ ・ヒエン

 NGUYEN     THU      HIEN

Profile & Message

2005年       ハノイ工科大学卒業

2016年      FPTジャパンに入社するため来日

2019年      JLPT N1に合格

2020年 ~ 2022年 PMI(プロジェクトマネジメント協会)の5つの資格を取得

2021年      同社にてライフ・タイム・ラーニング賞を受賞

2021年~     「BrSEのための日本語学習」グループを開設

学ぶ上で一番大切なことは何でしょうか? 知能? モチベーション? 勉強法? …

私は、「忍耐力」が一番重要であると考えています。 モチベーションは短い距離しか連れて行ってくれませんが、忍耐力は私たちをとても遠くまで連れて行ってくれます。

 モチベーションがなくても忍耐力で粘り強く頑張りましょう! 

2020年2月、私は「VOICE OF ASEAN SEMPAI」の第58号に出演する機会に恵まれ、BrSEとして働きながら、独学でN1資格を取得した経験を皆さんへ共有しました。その日からあっという間に4年が経ちました。今回再び、このVOICE OF ASEAN SEMPAIシリーズを通して皆さんと再会し、私が歩んできたその後の人生の旅についても共有する機会を得ることができ、とても嬉しく思います。今回は、1年半で5つの資格を取得した私の経験談が、皆さんに有益な情報をもたらし、学習意欲を高めるための刺激となることを願っています。

前回の記事:Voice Of Asean Sempai Vol 58


1年半に渡る 5 つの認定資格への挑戦

2020年1月、JLPT N1に合格後、私はPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)認定試験の勉強に挑戦し始めました。 これは、米国プロジェクトマネジメント協会 (PMI) がプロジェクトマネジメント分野の専門家を対象にして主催した、この分野で最も有名な国際資格の1つです。 

私がこの難関資格に挑戦しようと思った理由は、自分が担当している仕事をうまく進めるためには、プロジェクトマネジメントに関する基礎知識が必要だからです。しかし、私はこの分野では、正式にコースや教科書で勉強をしたことがなかったので、直感や他の人から教えてもらったこと、これまでの経験に基づいて、なんとか仕事をこなしていました。 PMP 資格の受験を決意することで、基礎的な知識を身につけ、自信を持って現在の仕事に向き合い、将来のさらなるキャリアアップの基盤を作りたいと考えました。

この資格についてさらに調べてみると、米国プロジェクトマネジメント協会がPMP資格の他に、多くの資格を主催しており、それらも私のようなプロジェクトマネジメントの仕事をしている人にとって、非常に役立つことが分かりました。 そこで、当初はPMP資格だけ受験するつもりでしたが、1年半かけて 5つの PMI 認定資格をすべて勉強し、受験するという長期計画に変更しました。

以下は、2020年8月から 2022年3月まで、私が勉強して取得した5つの資格のリストです。

2020年8月:PMP認定資格取得

2021年1月:PMI-PBA認定資格取得

2021年5月:PMI-RMP認定資格取得

2021年7月:PMI-SP認定資格取得

2022年3月:PMI-ACP認定資格取得


取得した5つの資格

上記5つの資格を1年半以上かけて取得するという目標を達成するために、各資格について細かく学習計画を立て、1つの資格取得にかかるスパンを2〜3ヶ月に設定しました。毎回、試験の学習計画を立てるときは、会社のプロジェクトの進捗スケジュールを確認し、それに基づき、学習計画を詳細に立て、毎日その計画に沿って進められるように努めます。

私の各試験の学習スケジュールは、だいたいこんな感じです。

毎日、電車の往復2時間を利用して、スマホにインストールしたテスト対策アプリで復習をします。夕方、仕事から帰って食事や家事を終えた後、さらに2〜3時間机に向かって勉強していました。週末の2日間が最も集中できる時なので、毎日8時間試験勉強に費やしています。GWやお正月などの長期休暇の時期もありますが、外出したりリラックスしたい気持ちを抑えて、決められた学習スケジュールに従って、1日8時間の学習時間を守るように頑張りなさい!と自分に言い聞かせています。

試験勉強に集中するのもそうですが、プロジェクトが予想外に忙しかったり、多忙な時期に入ったりした場合には、優先順位をリセットして仕事に時間を費やさなければならない場合もあります。コロナ禍の最中でベトナムがロックダウンされていた頃、PMI-ACP資格を勉強した時、のことを今でも覚えています。事前に綿密な学習計画を立てていたにも関わらず、ロックダウンの影響でベトナムにいる同僚全員が出勤できなくなり、ベトナム側の仕事は全て日本側でカバーしなければなりませんでした。毎日遅くまで仕事をしなければならず、夕方から勉強する時間があまり取れなかったため、試験準備が当初の予定より2ヶ月遅れました。

設定した目標を達成するために、試験に向けて計画的に勉強するつもりですが、その間に休憩を入れたり、1つの資格の試験が終わったらベトナムに帰ったり、どこかに旅行したり、息抜きをすることも心がけていました。

試験後の息抜き

先輩の経験談をフィルタリング

これら5つの試験の勉強を始めたとき、私にとって最大の困難は「言語の壁」でした。 試験対策の教科書はすべて英語で、900ページ近い分厚い本もあり、初めて開いたときは、出てくる単語がすべて新しい単語のように感じました。勉強を始めた頃は、膨大な知識に圧倒され、どこから始めればよいのか分かりませんでした。毎日フルタイムで働き、家事と子供の世話をし、さらに膨大な知識をインプットするのは、私には重すぎると感じ、辞めようと思ったこともありました。しかし、周りを見渡すと、同じ会社の同僚にも試験を受けて合格した人がいるのを見て、「彼らも私と同じように働いていて、取得できているのに、なぜ難しいと文句を言っているのだろう?」と思いました。私の決意が足りないのか?それとも正しい勉強方法を見つけていないのか?

そこで気を取り直して、まずは先輩たちに試験対策の経験を聞くことから始めようと思いました。皆さんから共有していただいた経験は、すぐに実践できそうなものもありましたが、自分の状況に合わず実践できなさそうなものもあります。オンラインの学習グループにも参加して、他の多くの人の経験も学び、自分のニーズに近くて適用しやすいものをフィルタリングし、自分に合った適切な試験準備の方法を見つけました。

試験準備の過程で私にとても適していると感じた秘訣の1つは、学んだすべての知識を別のノートに記録することです。勉強する時は、ただ座って本を読んだり、読んだ箇所に下線を引いたりメモしたりするだけではなく、常にペンを持ち、メモを取り、学んだことを自分の理解に従って体系化します。マインドマップ形式で図を描きます。手書きでメモを取ると、知識をすぐに自分のものにすることができ、分厚い本を再度開かなくても、ノートを改めて見るだけで、学んだ知識をすぐに復習することができます。私にとって、これは非常に役に立った学習方法であり、実際、この方法のおかげで、今でもノートを開くと 3〜 4 年前に学んだ知識をすぐに思い出すことができます。 新しい知識が多すぎて資格や試験の勉強が難しい場合は、この方法を試してみてください。

オンラインメディアを学習ツールとして活用

私の5つの資格の勉強のプロセスについて話をすると、多くの人に「1つの資格試験を受けるだけでも相当辛いですが、どうすればそんな風に5つ連続で試験に合格するモチベーションを保つことができますか?」と聞かれます。しかし、どんな長い旅でも、最初に踏み出した一歩の勢いが最も大切です。最初の障害や混乱さえ乗り越えて、学習の軌道に乗ることができれば、すべてが徐々にうまく進んでいきます。私の場合も同様です。

PMIの5つの資格を勉強する過程で、最初の資格取得が最も難しかったです。仕事のスケジュールに合わせて試験の勉強方法を模索する必要があり、新しい専門用語を読んだり、調べたりすることに慣れなければならないためです。ただし、この最初の課題を克服できると、次の試験からはだいぶ負担が減ります。自分が覚えた英語の語彙が増えたこともあり、教科書に出てくる専門用語も既に知っているものが多くなるからです。

近年、SNSや情報共有サイトの発達により、経験から学び、先輩たちとつながることが以前よりもずっと簡単になりました。ベトナムのプロのプロジェクトマネージャー向けの Facebook グループに参加することで、これらの資格の勉強をしたことのある多くの人々とつながり、英語とベトナム語の語彙を照らし合わせることができました。そして、ほとんどのベトナム人が受験したことのない資格については、英語で情報を探し、インドの経験共有グループや e ラーニング サイトに参加して学びました。

今日のようなフラットな世界では、学び、繋がるためのツールとして Facebook やオンライン情報サイトを活用する方法を知っていれば、多くの有益な情報を得ることができます。

資格試験を通した成長

1年半の間に5 回連続して資格の勉強をし、受験をすることで、私は大きく成長することができました。それぞれの試験勉強期間を通じて、家事、試験勉強、会社での仕事をバランスよくこなすための方法を、徐々に学んで行きました。短時間で多くの知識を覚え、大量の情報を処理する方法を理解しました。

試験勉強や仕事の過程で、学んだ知識を実際に仕事にも応用しようと努めました。理論を学ぶだけでなく、学びと応用を同時に行うことで、知識を長く記憶し、学んだ内容をより深く理解できるようになります。仕事上、直感的にAのやり方でやらなければいけないと思っていたのに、勉強が終わってみるとBのやり方でやらなければいけないことに気づいたり、以前は遭遇して正解した問題も多々ありますが、なぜそうする必要があるのか​​理解できませんでした。しかし、きちんと勉強したおかげで、なぜそうする必要があるのか​​が分かり、自分の解決策に自信が持てるようになりました。

さらに、資格を勉強することで英語力が上達し、さまざまな情報源から知識や経験を吸収するのにも役立ち、より国際的な基準で仕事ができるようになってきています。。以前は、問題を尋ねたり参照したりする必要がある場合、同じ会社の同僚か日本のサイトからしか学ぶことができませんでしたが、今ではアメリカ、インドのプロジェクトマネージャーの方々からの経験も参考にすることができるようになりました。また、大規模なプロジェクトに参加する時も、プロジェクトの課題を事前に予想していたので自信がつきました。(試験の勉強では、具体例や解決策を詳しく教えてもらえることが多いので、仕事にはすぐ応用できます。)同僚や上司からの信頼や信用も高まります。これは私にとって本当に大きなモチベーションです。

今働いている方で、自分をさらに成長させるために何か新しいことを学びたいと考えている方は、現在の仕事に関連した内容や資格の勉強から検討してみてはいかがでしょうか。そうすれば、学んでいることが非常に実践的であると感じ、さらに努力する意欲が高まります。

経験の共有ー与えて受け取る

試験勉強の過程で、オンラインのサイトやグループを通じて先輩たちから多くの有益な情報を得たので、試験が終わる度に記事を書いて、今度は自分の経験が次に試験を受ける人のために役に立てばと思っています。

これまでの継続的な努力のおかげで、2020年〜2022年まで3年連続で会社の年末の総まとめ会で表彰されました。それらの賞の中で、私が一番嬉しかったのは「ライフタイムラーニング賞」でした。

ライフタイムラーニング賞」を受賞

2021年末から現在に至るまで、会社からのオファーをいただき、PMI資格の勉強をしようとしている同僚に、試験勉強に関する経験や知識を伝えるための講師を勤めています。

会社の内部活動を通じて経験を共有することに加えて、継続的な学習のモチベーションを多くの同じ業界の友人や後輩に広めたいと思い、「BrSEのための日本語学習」というFacebookグループを開設しました。グループを作った当初は、同じ職業の人たちが経験を共有し、交流したりする場を作りたいというだけのつもりでしたが、思いがけず皆さんから反響があり、今ではグループが大きくなりました。会員数は10,000人を超えています。

グループに参加した人の中には、私がこの会社で働いていることを知って、応募したという方もいます。ベトナム在住の皆さんの中には、日本で働きたいという夢を持っている方も多く、最初の日本語レベルは十分では無かったが、グループに参加したことで日本語をもっと勉強したいという意欲が湧いてきたという方がいました。来日後、彼が最初に連絡したベトナム人が私で、そのメッセージを受け取った時は本当に感動しました。私がシェアしたことが広まって、皆さんに良い影響を与えていると感じると、本当に嬉しいです。

グループのメンバーと交流

メッセージ

 PMI の5番目の認定資格に合格してから、約2年が経ちました。 近いうちに、以前は、必要な経験年数を積めていなかったため、受験ができなかったPMIの最も難しい資格を受験する予定です。早くこの資格を取得して、また皆さんにその経験を共有したいと思っています。

 スティーブ・ジョブズが「学位を持っていなくても成功している人はたくさんいるが、勉強しない人は成功できない」という、とても良い言葉を言ったのを覚えています。特にあらゆるものがAIに置き換わっている今の時代では、何も新しいことを学ばずに立ち止まっていると、すぐに取り残されてしまいます。

 社会人で、さらに自分の家族を持っていると、私たちは皆、何か新しいことを学ぼうとする時に、必ずその学習意欲を妨げるような課題に直面すると思います。ただ立ち止まって困難を想像し、考えているだけでは、決して前に進むことはできません。新たな挑戦に大切なのは、「困難は知恵を生む」という精神で、困難に直面しても、解決策を見つけ出す決意と忍耐力を持つことです。粘り強く続ければ、必ず大きな成果が得られます。

 学ぶ上で一番大切なことは何でしょうか? 知能? モチベーション? 勉強法? …私は、「忍耐力」が一番重要であると考えています。 モチベーションは短い距離しか連れて行ってくれませんが、忍耐力は私たちをとても遠くまで連れて行ってくれます。

  モチベーションがなくても忍耐力で粘り強く頑張りましょう!

大阪,  2/2024