リリ・ラウキル・クドゥス
RIRI RAUKHIL KUDUS
リリ・ラウキル・クドゥス
RIRI RAUKHIL KUDUS
Profile & Message
2016年 インドネシアの看護学部を卒業
2017〜2018年 日本で働くためのプログラムに応募し、面接を受けて合格
2018年 日本語の勉強をし始め、日本語能力試験N4に合格
2019年 介護の技能実習生として来日
2020年 日本語能力試験N3に合格
2022年 特定技能ビザに変更
2025年 日本語能力試験N2の合格を目指して勉強中
2026年 介護福祉士の国家資格を受験予定
「あきらめたくなる日もあるかもしれません。しかし、あなたが毎日学んでいる言葉だったり、生き方、そして思いやりや忍耐力、そのすべてが、きっとあなたの未来の大きな力になります。」
日本へのあこがれ
こんにちは。インドネシア出身のリリです。
日本に来る前、私は私立大学の看護学科を卒業し、就職先を探していました。
日本は、学生の頃からずっと私にとって特別な存在でした。文化や人々、アニメや桜の景色まで…すべてが魅力的で、「いつか一度でいいから、この国に行ってみたい」とずっと思っていました。
そんな中、高齢者介護の仕事で日本に行けるチャンスがあり、私は「これを逃すわけにはいかない」と思い、挑戦することを決意しました。
しかし、最初は家族がとても心配していました。言葉も文化も宗教も違う日本で、ちゃんとやっていけるのかと不安があったからです。ですが、私は自分の夢、そして「もっと成長したい」という気持ちを正直に伝えました。
時間はかかりましたが、家族は最終的に私の気持ちを理解し、次第に応援してくれるようになり、。それが私にとって大きな力となりました。
その後すぐに日本語の勉強をし始めました。最初は漢字が本当に難しくて、「なんでこんなに覚えられないの!?」と、まるで悪夢のように感じました。。
しかし、毎日少しずつ、コツコツと勉強を続けていくうちに、日本語能力試験N4に合格し、さらに日本語能力試験 N3にも合格できました。
もちろん、勉強がいつも順調というわけではありませんでした。友達や家族のこと、自分の感情の波にのまれて、集中できない時期や、勉強しても頭に入らない日々が続き、貴重な時間を無駄にしてしまったこともありました。
今思えば、あの時間は少しもったいなかったな…と感じることもあります。
しかし、その経験の中で私が気づいた大切なことがあります。
それは、「立ち止まらなければ、たとえ歩みが遅くても、確実に前に進んでいる」ということです。
日本での最初の日々
私が日本に来たのは10月でした。ちょうど秋で、涼しくて心地よい気候がとても新鮮に感じられました。一年中暑いインドネシアで育った私にとって、あの爽やかな風はまるで別世界のようでした。しかし、その数週間後、本格的な冬がやってきました。あの寒さは今まで経験したことのないレベルで、息が白くなり、手足がかじかんでしまうほどでした。
寒さだけでなく、生活も本当に大変でした。スーパーに行っても商品ラベルが読めず、特に宗教上の理由で豚肉を避けたい私にとって、食材選びは一苦労しました。インスタント麺一つ買うのにも、調べるのに時間がかかっていました。そんな中、インドネシアやベトナム、アジアの食材を扱っているお店を少しずつ見つけることができました。故郷の味、見慣れたスパイスや食材に出会ったとき、「知らない世界の中に、小さな“居場所”を見つけた」気持ちになりました。
それでも、心が折れそうになる日もあります。仕事で疲れた時、言葉が全然聞き取れない時、寂しさで押しつぶされそうになった時は「帰りたい」と思ってしまいます。そんな日は必ず母に電話します。母の声を聞くだけで、不思議と心が落ち着いて、また頑張ろうと思えるのです。
高齢者介護の仕事―大変だけど、やりがいのある毎日―
私は現在高齢者の介護施設で働いています。利用者さんが起きてから寝るまで、生活のサポートや身の回りのケア、食事の介助、話し相手、そして健康状態の確認などを担当しています。
働き始めた頃は、不安なことだらけでした。中でも一番大変だったのは、電話対応です。話すスピードが速く、使われる言葉も専門的で、最初は何を言っているのか全くわかりませんでした。そんな時は、「間違えたらどうしよう」と不安でいっぱいになりましたが、ありがたいことに、先輩や上司、同僚たちがいつも、作業のやり方だけでなく、話し方や接し方、職場でのマナーや文化まで、優しく丁寧に仕事を教えてくれました。仕事を続けるうちに、「この仕事は、自分に合っているかもしれない」と感じるようになりました。高齢者介護の仕事は決して楽ではありませんが、その分、特別な喜びがあります。毎朝、笑顔で「おはよう」と声をかけてくれるおじいさんやおばあさんの存在に、私の方が元気をもらっているような気がします。
ある日、ご家族の方が「ぜひ一緒に写真を撮りましょう」と声をかけてくださって、その写真をわざわざ印刷してプレゼントしてくれたことがありました。今でもその写真は、私の大切な宝物です。単なる思い出ではなく、人と人とのつながりを感じさせてくれる、大切な証だと思っています。
学びを止めず、自分のペースで夢を育てる
仕事が忙しい中でも、日本語の勉強は続けています。私は本やスマホアプリ、YouTubeの動画を使ったり、たまに友達と一緒に勉強したりしています。人によって自分にあった勉強法は違うと思いますが、私の場合は、紙に書いて覚える方法が一番効果的です。
今は日本語能力試験N2の合格を目指して勉強中で、同時に介護福祉士の国家資格取得も目指しています。覚えることが多くて、時間も限られているので、正直くじけそうになる時もあります。しかし、「毎日少しずつでも積み重ねれば、いつか必ず力になる」と自分に言い聞かせながら頑張っています。
仕事と勉強の合間には、料理の時間を大切にしています。特に辛い料理が好きで、まとめて数日分作ることが多いです。特別な食材が必要なときはネットで注文して、普段の買い物は近くのスーパーに行っています。たまに難波のほうに行って、インドネシアやアジア、ベトナムの食料品店をのぞいてみると、「ちょっとだけ帰国した」という気持ちになれます。
仕事のシフトがみんなバラバラなので、友達とはなかなか会えませんが、月に1〜2回は時間を作って会うようにしています。ご飯を一緒に食べたり、少し散歩したりするだけでも、すごく元気をもらえます。
歩み続ける理由
以前、「日本に何年も住んでるのに、まだ何も手に入れてないの?」と言われたことがあります。 その言葉を聞いたとき、私はしばらく言葉が出ませんでした。しかし、ふと思ったのです。
「“何かを手に入れる”って、いったい何を意味しているのだろう?お金のこと?それとも、毎日の中で積み重ねてきた価値や経験のこと?」
私にとって、前に進む力になっているのは、プレッシャーではなく“信じる気持ち”です。自分が選んだ道を信じているし、あきらめなければ、どんな一歩にも意味があると信じています。
そして、何よりも家族の存在が、いつも私の一番の原動力です。さらに、私にはもう一つの夢があります。いつか、日本とインドネシアの文化をつなぐ小さなお店を開きたいのです。たとえば、食べ物でも、商品でも、サービスでも 、そんな場所をつくれたらいいなと思っています。
メッセージ
これから日本に来ようとしている人、または、すでに日本にいるけれど「もう疲れたな…」と感じている人へ。
どうか忘れないでください。あなたは一人ではありません。
あきらめたくなる日もあるかもしれません。しかし、あなたが毎日学んでいる言葉だったり、生き方、そして思いやりや忍耐力、そのすべてが、きっとあなたの未来の大きな力になります。
疲れたときは、少し休んでください。好きなものを食べて、家族に電話して、誰かに気持ちを話してみてください。全部ひとりで抱え込まないでくださいね。
私も、ここまでの道のりを支えてくれた人たちに心から感謝しています。友達や職場の仲間、そして毎日接している優しいおじいさん・おばあさんたち。
その存在があったから、私はこの異国の地で“ひとりじゃない”と感じることができました。
そして、きっとあなたも、あなたなりの“意味”を見つけられる日が来ると思います。
私が小さくて温かい日常の中で、おじいさん、おばあさんのやさしい笑顔をもらった日から自分の価値がわかったように、皆さんにもそんな日がくることを願います。
大阪、 2025/06