イェリア・  ノール

YELIA NOOR

Profile & Message

2002年 パダン市 ブンハッタ大学 日本語学科卒業

2003年 大学で日本語教師として働きながら、日本へ行ける奨学金プログラムに挑戦

2008年 農業技能実習生として日本の香川県へ(3年)

2011年 実習期間が終了し、一時的に帰国

2012年  再び来日後、横浜国立大学大学院 

都市イノベーション学府で研究生を開始

2014年   横浜国立大学大学院 環境情報学府 入学

2016年  4月より新入社員として食品会社に入社

「自分という柱をしっかりと持って、どんなに苦しい状況でも、本当に頑張っていれば夢は叶う。頑張っていれば、それを周りの人たちも見ていてくれ、困った時は力になってくれる。」

「お金持ちになりたい!と日本語学習を開始!」

私はインドネシアの小さな町で生まれ育ちました。日本語を勉強し始めたきっかけは、いとこの「日本語を覚えて日本に行けば、お金持ちになれるよ!」という言葉でした。しかし、小学生の時に親が離婚をして母子家庭だったため、お母さんに「日本語学科のある大学に行きたい」とは、なかなか言えませんでしたが、勇気をもって相談をしてみると、お母さんは一生懸命働き、車を売ってまで大学費用を作ってくれました。

日本語学科を卒業した後、すぐに日本へ行きたかったのですが、お金がなかったので、大学で日本語教師として働きながら、インドネシアの文部科学省が行っている日本留学のための奨学金プログラムに応募をしていました。それでも、そのプログラムでは広いインドネシアの中から2~3名しか選ばれないとても難しいもので、残念ながら私は日本へ行くことができませんでした。

日本の大学院へ行くために、農業技能実習生になることを決意

 そのような中、大学の後輩が、日本の大学院で奨学金をもらいながら勉強をしているという話を聞いて、自分も彼女と同じ学校で勉強がしたいと思うようになりました。どうしても大学院で勉強をしたかったのですが、お金がなかったので、「農業技能実習生として日本に行き、お金を貯めよう!」と決意しました。

しかし技能実習制度は、最初に担保として42万円という大金を収めなくてはならず、私はそのお金を準備することができませんでした。そこで当時日本語学科の先生をしていた「井上先生」に相談をしてみると、「イェリアはいつも頑張っているし、せっかく日本に行くチャンスだから、貸してあげるよ!」とお金を貸してくれることになりました。私はすごく感謝をして、絶対返すと約束をし、日本の香川県で無事3年間の技能実習を終えることができました。

大学院で研究生として必死に頑張る!

技能実習を終え、一時帰国後、再び来日し、大学の後輩がいる研究室で研究生になれましたが、今まで勉強したことのない「社会学」は分からないことだらけで、言葉のほとんどを理解できませんでした。それに加え、一緒に勉強をしていたメンバーは、優秀な日本人や中国人が多く、本についての議論になると自分だけ何も発言ができなくて焦り、「こんなに何度も読んでいるのに、何故自分だけ理解できないのだろう?」と、とてもプレッシャーを感じてしまいました。

頼りにしていた大学の後輩とも、ミスコミュニケーションにより距離ができてしまい、日本人の友達もみんな忙しく、頼れる人がいない私は次第に引きこもりがちになってしまいました。

香川県での生活はいつも周りに誰かがいて、話せる仲間がいる環境でしたが、大学院での生活はいつも独りぼっちでした。少しノイローゼ気味になってしまった私は、一度インドネシアに帰ってリフレッシュし、日本に戻ってきてからはインドネシア人コミュニティに積極的に参加をすることにしました。

その結果、ポジティブに考えられるようになり、「人に頼るのではなく、自分の力でやらなければならない」「とりあえず目の前のことを一つ一つやるしかない」と自分に言い聞かせて、がむしゃらに頑張れるようになりました。

「大学院生になる!」という夢がかなう

研究生として勉強し始めて1年目で、院生になるために試験を受けましたが、日本語力が足らず、不合格でした。

それでも諦めずにもう1年研究生として勉強してから再チャレンジをすることにしましたが、結果自分の行きたかった学部には落ちてしまいました。

私は自分の行きたかった学部を諦めて、他の学部を受けることにしましたが、他の学部の入学試験も非常に難しく、筆記試験は全然上手くいきませんでした。

しかし面接では、自分の大学院進学に対する想いを必死に話すことができ、無事合格をして大学院生になる!という夢をかなえることができました。

諦めずに就活を続けて良かった!

大学院2年目になり、就職活動を始めると本当に大変でした。修士論文を書くのに並行をして就職活動も行わなければならないからです。時間を見つけては複数のジョブフェアに行き、合計で8社受けましたが、ことごとく落ちてしまいました。

そんな中、私が研究生の時からずっと奨学金を頂いている食品会社の懇親会に参加をする機会がありました。

そこで会社の人へ、まだ就活が終わっていないことを伝えると、“新卒として入社試験を受けてみないか?”とご提案を頂き、2回の面接試験を経て無事内定を得ることができました。

私は現在34歳で、新卒として入社をするのは難しいと思っていましたが、最後まで諦めずに就活を続けていて本当に良かったと心から思いました。

メッセージ

どんなに苦しい時でも、自分の置かれている環境から逃げずに、「小さな努力」を続けていった結果、できることが一つ一つ増えていきました。そうすれば、神様や自分の努力を見てくれていた人が力を貸してくれるのです。

私の場合、母親が車を売り大学進学の資金を集めてくれたり、技能実習生として日本に行く際には、先生が大金を貸してくれたり、困っている時にはいつも誰かが力を貸してくれました。

今私は、「自分という柱をしっかりと持って、どんなに苦しい状況でも、本当に頑張っていれば夢は叶う。頑張っていれば、それを周りの人たちも見ていてくれ、困った時は力になってくれる。」と信じています。

横浜、2016年2月