ドン・ カック・ターイ
DONG KHAC THAI
Profile & Message
2010年 ホーチミン工科大学卒業
2011年 日本のIT企業の現地採用試験に合格し、来日
2016年2月 「BETO AJI」のグループ内で日本人と農業体験活動を開始
もし、あなたが、日本のことをもっと知りたいと思っているのに、どこからはじめてよいか分からない以前の私と同じ状況であれば、博物館や展示館に足を運んだり、私たちの交流会に参加して、自分で体験したことを日本人へ話してみませんか?日本のイメージが変わっていき、今後の日本での生活も面白くなると思いますよ。
ドラえもんと日本への夢
子供の頃、好きな漫画はドラえもんでした。そして、漫画の中の世界を実際に目で見たり、体験してみたいと思い、幼い頃から日本へ行く夢を抱いていました。
日本勤務の求人票が頻繁に新聞に掲載されていたので、大学卒業後にエンジニアとして日本に行こうと決めました。
18歳で大学の入学試験が終わってからは、日本語センターで日本語の勉強をしながら、日本へ行けるチャンスを待ち続けました。大学の授業が終わると週に3回、日本語センターへ通い日本語を勉強し、空いた時間には、「NIPPONIA」という無料雑誌を通じて日本国や文化について調べていました。数年間日本語センターで勉強したり、家で自習したりしたことで、JLPT 2級を取得ことができました。そして、大学卒業後、ベトナムで行われた面接会に合格し、日本に行くチャンスがやって来ました。
来日当初は文化や様式の違いに驚いたこともありましたが、学生時代に一所懸命日本語を勉強したため、仕事に慣れるまでの時間はかかりませんでした。しかし、仕事が忙しかったことと、お金を節約する気持ちがあったので、会社や家以外にはどこにも出かけませんでした。週末に出かけたり、日本人と話したり、「NIPPONIA」で読んだ日本の文化を実際に体験したい気持ちもありましたが、どこからはじめたらよいのか分からなくて、行動していませんでした。
日本人との交流会に参加
もし、知り合いの日本人が主催する国際交流会に申し込んでいなかったら、私の日本での生活は変わらなかったでしょう。
交流会に参加してみると、日本人の友達とたくさん知り合うことが出来ました。グループに別れて生活の色々なトピックスについて英語でしゃべり、とても楽しかったです。この交流会に参加していた日本人は、いつも同じ話を日本語でしゃべる同僚の日本人と違い、外国人が好きで、オープンなコミュニケーションを取ってくれました。英語の練習にもなり、色々な話で盛り上がりました。
交流会に参加すればするほど、日本人との距離は近くなり、仕事や普段の生活では分からない日本の文化、日本人の考え方について深く理解することが出来ました。そして、日本人と交流したいがどうしたらよいか分からない以前の私の気持ちと同じベトナム人が沢山いるだろうと思いました。やがて、その人たちが日本人と楽しく交流できる環境を作りたいという気持ちが大きくなり、交流会の規模を拡大し日越交流会の開催を日本人の友達へ相談しました。
日本人の友達は交流会の経験があるので、開催や運営はほぼ問題ありませんでした。1回目の交流会は、参加者25人でしたが無事に成功しました。その交流会は特に大きなイベントでなく、区民間の大きな部屋を借り、コミュニケーションが好きな日本人とベトナム人がグループに別れ、自己紹介をしてからおしゃべりをするだけの活動です。常に日本語でしゃべりますが、ベトナムが好きでベトナム語を勉強している日本人も参加しているので、たまにベトナム語で会話をすることもありました。
交流会が終わっても、連絡を維持するために電話番号やFacebookなどお互いに連絡先を交換して友達になったケースが沢山あります。交流会で知り合った人たちが一緒に遊びに行った写真をFacebook上で見ると、人と人を繋ぐ架け橋ができた気持ちが溢れ、とても嬉しいです。特に思い出に残っているの、交流会で出会ったベトナム人女性と日本人男性のことです。その二人のラブストーリーは、最近新聞や日越コミュニティページでも紹介されました。
週末の過ごし方
交流会で知り合った新しい友達や、新しい体験、良い話のおかげで、日本の文化や社会、日本人をより深く理解する方法を見つけました。
それは、パーティーや買い物の代わりに、「東京人」や、「Discovery Japan」等の雑誌で面白そうな場所を事前に調べておき、週末にそれらの場所へ行くことです。東京都内の中心にある古本屋街や、お札と切手の博物館、ベトナム戦争に記者として参加した有名な開高健の記念館など、一般的に知られている有名な観光地よりも外国人の認知度が低いところへ行くようにしました。それによって、日本の文化や歴史をより深く理解することが出来ました。例えば、お札の博物館に行ったことで、日本人でも知らない日本のお札の偽造防止技術を知ることができ、日本人と話をする時の様々なトピックスになりました。
このような観光地は、チケットや入場料が安く(数百円か、無料なところもある)、東京近郊にあるため家からも近く、色々な知識を得ることが出来ます。
農業体験と人生の教訓
交流会や毎週末の小旅行のおかげで、日本での交友関係が広がっていきました。そして、「BETO AJI」というベトナム料理教室で、定年退職した農業好きな日本人のおじいさんたちと知り合いました。
おじいさんたちは東京農業大学の出身で、定年退職した後に茨城県牛久市の土地を借り、日曜日に皆で農業を楽しんでいます。おじいさんたちの農業体験を聞いていると、汗をかいて一所懸命農業をして、自分が栽培した野菜が大きくなる過程を見て幸せな気持ちなることを自分も体験してみたくなりました。そのような農業体験は都会で生まれ育った人にとっては珍しいものです。そこで、週末におじいさん達といっしょに農業をするグループ活動を始めたいと考えました。日本の農業技術を覚えることと、日頃の仕事のストレスを解放することを目的として、「BETO AJI」のグループ内で農業が好きなメンバーを募りました。
今年の2月から、日曜日に「農業体験」活動を始め、11月現在では40回以上となりました。土づくりや野菜の栽培・収穫方法など、おじいさんたちに教えて頂き、トマト、カボチャ、パプリカ、茄子、大根、竹の子など年間40種類以上の野菜を栽培しています。収穫した野菜は参加したメンバーに配られますが、自分が栽培した野菜を使って作った料理はとても美味しいです。
また、農業体験はとても疲れますが、肉体労働をすることで頭の中が解放され、気分が良くなります。そして、おじいさん達とも沢山おしゃべりをするので、色々な日本語を覚えることができ、おじいさんたちの人生の話や、面白い話も聞かせて頂けます。
大根を植え付けている時に、なぜ大根の栽培では常に水やりをしないのですか?と、おじいさんに質問すると、「常に水やりをしないのは、大根の根が自分で水脈を見つけて給水すれば、元気で大きな大根になるからだよ。いつも水やりをしていたら、根が動かずに給水できてしまい、その根自身も弱くなってしまうんだ。人間もそうだけど、見守りすぎや甘やかしすぎると、独立できずに、弱くなってしまうんだよ。」と、おじさんが言ったことが一番印象に残っています。
農業体験に参加すると、毎回日本語の新しい言葉やことわざ覚え、おじいさん達の経験豊かな話を聞かせて頂き、日本についての知識が広がり、新しい価値観を身に付けることができます。日本のことわざ「継続は力なり」(何事も辞めずにやり続ければ必ず力がついて成功するという意味)からすると、この「農業体験」の活動が40回以上になったことがグループの小さな成功だと思います。私たちと同じく良い体験をして頂くために、沢山のベトナム人にこの活動を知ってもらい、グループをもっと拡大して維持していきたいと考えています。
メッセージ
来日後のつまらない生活をおくっていた1年半と比べると、週末の小旅行や交流会に積極的に参加したことで、日本人の友達が沢山でき、ベトナムにいる時に体験したかった日本の文化や社会について新しい知識を得ることが出来ました。毎週末とても慌しいですが、そのような経験は日本での生活や、今後の人生に有益な知識になると確信しています。
もし、あなたが、日本のことをもっと知りたいと思っているのに、どこからはじめてよいか分からない以前の私と同じ状況であれば、博物館や展示館に足を運んだり、私たちの交流会に参加して、自分で体験したことを日本人へ話してみませんか?日本のイメージが変わっていき、今後の日本での生活も面白くなると思いますよ。
東京、2016年11月