デニス・チア

DENIS CHIA

Profile & Message

2008年 早稲田大学国際教養学部に入学(私費留学)

2011年 東日本大震災後、様々なボランティア活動に参加する

2012年  大学卒業・就職

2012年~2013年 会社で働くことに違和感を覚え、転職を重ね、フリーターになる

2014年      東京大学大学院に入学

2016年   東京大学大学院を修了

2017年           Sosei Partners事業開始

日本への留学をきっかけに、日本の社会問題と自分の役割を意識しましょう。共により良い世界を作りましょう!

青春を謳歌した大学時代

中学1年生の頃に日本語の勉強を始めた私は、その時から日本への留学にずっと憧れていました。高校卒業後、シンガポールの徴兵制のため2年間の軍隊訓練を経て2008年に念願の日本への留学が叶い、早稲田大学の国際教養学部に入学しました。ずっと夢見ていた留学が実現した感激を未だに鮮明に覚えています。

大学4年間は日本の大学生らしく過ごしました。国際交流のサークルに入り、アルバイトをしながら大学の勉強に励んでいました。アルバイトの職場ではたくさん勉強になり、学校では新しい仲間ができて、キラキラ輝く青春時代を堪能しました。私は旅行が好きなので、大学時代はアルバイトで貯めたお金でよく国内旅行をしていました。休みの度にどこかへ足を運び、気付いたら大学4年間で47都道府県を回りました。そのときは有名な観光地ばかり回っていたのですが、観光地に行っても観光客しかいないことに、4年目にして初めてはっと気付かされたのです。

特に印象に残ったのは、2011年3月11日に起きた東日本大震災でした。震災後、私はボランティア活動に参加し、よく東北の沿岸部に足を運びました。そこには、有名な観光名所もなければ、買い物するところもなかったのですが、初めて日本文化の真髄を発見できた気がしました。

私がずっと探し求めていた「日本」は、観光地にはありませんでした。私が探し求めていた「日本」は日本各地の地域文化に触れ、その地域の人々の日常生活をお裾分けしてもらうことで初めて見つかるものでした。

その後、また日本中を飛び回り始め、観光地ばかりではなくその地域に入り込んで現地の日常生活に溶け込もうとしました。そこで、再び日本の美しき四季と田園風景、奥深い伝統文化、そして人情溢れるおもてなしに魅了されました。

暗闇の中で迷走

終わらない祭りはない。楽しすぎた大学生活は幕を閉じました。そして、気付いたら周りの友達は黒スーツと黒髪に変身し、就職活動をしていました。私は就職したい会社もなければ、その先やりたいこともわかりませんでした。しかし、就職しないと周りの人に置いていかれると思い、自分も就職活動を始め、なんとか就職先を見つけました。

残念なことに、会社で働くこと、会社の上司の指示ばかりに従い、自分が好きでもない作業をさせられることが死ぬほど嫌でした。あまり先のことを考えずに就職したため、仕事内容は自分がやりたいことと違っていたことに入社後、初めて気付きました。そして、入社して半年足らずで辞めてしまいました。次の仕事に行ってもまた同じこととなり、2年間の間に3つの会社を転々とし、迷走していました。

3社目を辞めた時、自分の未熟さに気付かされ、激しく反省しました。周りの友達が着実に経験を積んでいる間、私は自分勝手でわがままなことをしていました。会社に入っても同じことを繰り返すだろうと思い、とりあえず大学院に入ろうと思いました。そこで東京大学の大学院を受験しました。大学院には受かったものの、入学が1年先だったのでその間はアルバイトを掛け持ちし、ボランティア活動をし、本を書いて自費出版し、そしてNGOピースボートでインターンシップを始めました。

2年間くらい暗闇の中を迷走し、失望と絶望と自己嫌悪と戦いながら過ごしました。人生は山あり谷あり、この時は人生の底辺をずっと走っていました。そして、2014年10月に待ち遠しかった大学院に入学し、再び勉強と研究の毎日に戻りました。

人生再スタート

2016年9月に東京大学大学院を修了しました。普通に就職することに抵抗があったので、家族と友達の応援で会社を設立しました。大学院では「災害と地域社会」の研究をしており、紛争、飢餓問題、災害、貧困問題などに興味があったので、将来は国連機関に入り、持続可能な社会作りに貢献したいと考えていました。

しかし、現実はそんなに甘くなく、国連機関に入れるのはほんの一握りの優秀な人に限られることを知りました。そこで、今自分が住んでいる日本、そして自分がずっと大好きだった日本の現在の社会問題に目を向けようと思いました。日本はバブル経済が弾けた頃から、ずっと経済が低迷し、そして地方の少子高齢化、地方の一次二次産業と伝統産業の衰退などの問題が深刻化しています。

「持続可能な社会づくり」に潜んでいる「持続可能性」という概念は日本古来の思想にあると思います。伝統を重んじながら前を向き、自然を大切にし、自然とともに共存することは日本文化の本質です。里山文化、もったいない精神などといった思想と文化を再発掘し、現代に合う形に編成すれば、きっと持続可能な将来を構築できると信じています。

更に、日本が現在直面している様々な問題は、10年後、20年後には世界のほかの国でも起きうることであることから、日本は「課題先進国」と呼ばれています。そのため、日本が先に直面する問題の解決策を導き出し、それを世界に示すという大役があると思います。

その一つの解決策として、2014年に始まった「地方創生」が挙げられます。衰退が止まらない地方に歯止めをかけ、都会と地方の関係を見直し、もっと持続可能な発展を促すことです。

地方創生の活動は現在日本各地で行われていますが、日本に住んでいる「外国人」が関わることができる場がありません。日本の全体人口が減少していることに対して、留学生をはじめ日本在住の外国人は毎年増加しています。そこで、地方創生において留学生が活躍できるプラットフォームを作ろうと思って、今の会社を立ち上げ、Sosei Partners(地方創生パートナーズ)という事業を始めました。

地方と留学生をつなぎ、留学生が「お客様」としておもてなしされるのではなく、留学生も地方の方々も「主役」になり、一緒に地方創生に向けて活動できるプログラムを作ろうとしています。具体的には、留学生がある地域で滞在しながら、現地の観光資源を体験します。その地域の文化を理解した上で、自国の傾向や動向を調査し、それと照らし合わせてその地域の観光を再編成し、新しい切り口から観光戦略を提案するという内容を実施します。そして、留学生と地方の交流によって多様性が育まれ、留学生が将来、その地域と自分の国、そして世界をつなぐ架け橋になってくれることが目標です。

今後は留学生の皆さんの力をお借りして、一緒に「持続可能な日本」、そして「持続可能な世界」を実現したいと考えています。

メッセージ

日本への留学をきっかけに、日本の社会問題と自分の役割を意識しましょう。共により良い世界を作りましょう!

     東京、2017年5月