グェン ・  ルイ・カイン

NGUYEN   DUY   KHANH

Profile & Message

2008年 ハノイ国家大学 IT学部 入学
数ヵ月後に退学し、日本語学習を開始

2010‐12年   来日 日本語学校で勉強

2012年 拓殖大学経営学部入学

2016年3月 拓殖大学経営学部卒業

2016年4月   日本の人材紹介会社(ベトナム関連業務) 入社

内定は最終目的ではなく、日本での就職の始まりです。入社した後のことをよく考えて、職場環境や実際の仕事内容などを事前に会社の人と相談してください。入社後、もし自分には向かない仕事だと感じたら、再度自己分析をして、新しい進路を考慮しても良いと思います。なぜなら、私たちはまだ若いからです。

母の期待

2008年高校卒業後、ハノイにある大学のIT学部を受験しました。しかし、入学したばかりのある日、母から電話がかかってきました。「明日から日本語を勉強して、日本へ留学しなさい。日本へ留学すれば、将来が明るくなるよ」と、母に急に言われました。

日本ついては、ドラえもんとスチュワーデス物語の千秋さんしか知りませんでしたが、色々なことを体験したいと思っていた私は直ぐに母の意見に賛成し、日本への留学はあっさりと決まりました。

留学生が感じる困難な時期

 ベトナムでの日本語学習期間が終わり、2010年4月のある大雨の日に来日しました。長旅の後、家具などが何もない部屋でルームメイトと一緒にインスタントラーメンを食べていると、母が作ってくれた美味しい料理を思い出して、何だか自分がかわいそうだなあと思いました。しかし、せっかく日本に来たのだから、しっかりと日本語を勉強して母の期待に応えられるように頑張らないと…と考えました。

日本語学校に通う生活に慣れてくると、親の経済的負担を減らすために、アルバイトを始めました。毎日アルバイトから帰宅するのは深夜になり、風の強い冬の日には体が震えました。もし日本に来ていなければ、この時間には温かい布団の中で寝ているのになあ、と思って落ち込みました。しかし、落ち込んでも直ぐに、「日本に来たのだから、日本語の勉強だけでなく、困難なことを乗り越えて成長するのも大きな目的だ」と考えて、ホームシックの気持ちを抑えて、アルバイトと勉強を両立するように頑張りました。

学生時代は様々なアルバイトをしました。日本語が上手く話せない時期は、駅の清掃や、弁当工場で深夜働きました。日本語が少し上手になると、居酒屋や飲食店でアルバイトを始めましたが、お客さんの話すテンポが速くて、よく理解できませんでした。料理を運ぶテーブルを間違えたり、ミスをしてお客さんからクレームがあり、店長に注意されました。早く仕事の言葉を覚える方法や、早く仕事に慣れる方法があれば良いなあと、と思いました。その時私が感じたことは、多くの留学生も感じることだと思います。これから、同じ困難な時期を過ごす後輩たちへ何かサポートしたいと思っていましたが、勉強やアルバイトに追われて、だんだんとその気持ちを忘れていきました。

日本での就職活動

勉強とアルバイトをする日々を繰り返していると、日本語学校の2年間と、大学での2年間があっという間に過ぎていました。大学3年生になると、インターンシップなど就職活動の準備を始めだす日本人の同級生を見て、日本での就職活動を成功させるために自分も早く準備をしないといけないと気づきました。まずは、日本の会社での働き方を理解するため、大手電気情報通信会社のインターンシップに申し込みました。インターンシップの期間が短かったですが、日本の職場の雰囲気や、外国人が直面する困難が分かりました。

就職活動を開始した当初は業界を絞らず、ベトナムに関連のある会社で働きたいと考えていましたが、企業の説明会や面接会を通じて、各業界の話しや、OB・OGの熱い想いを聞かせてもらい、就職活動は自分のやりたいことを見直す大事なチャンスだと思いました。そこで、ベトナムに関連のある会社だけでなく、日本の社会や自分のことをもっと深く理解する目的を持って就職活動を進めました。

面接を20回ほど受けて、ベトナム関連の事業を行っている2つの会社から内定を得ました。一つ目の会社は、ベトナムのノイバイ国際空港の電気設備施工会社で、安定的な仕事なうえにキャリアアップも期待できる良い会社です。二つ目の会社は、人材紹介会社で、安定していない仕事ですが、挑戦したい人に向いている会社です。どちらの会社に入社するか迷いましたが、色々な人と出会える営業職に興味があり、新しいことに挑戦したかったので、二つ目の会社を選択しました。

入社後の困難

内定が出た後は就職活動を辞めて、運転免許学校に通いながら、新入社員向けのビジネスマナー講座に参加し、入社を楽しみに待っていました。

そして、ついに望んでいた日が来ました。出勤初日、会社に到着すると上司に呼び出され、営業目標や売上についての話しを聞きました。お昼になると、顧客宛に営業電話をかけ始め、12時~18時までの6時間に100コールかけました。翌日も同じことを繰り返しましたが、営業電話をかける宛先のリストは長く、1つの電話が終了したら直ぐに次の顧客先に電話をかけないと終わりません。もし、営業時間内に終わらないと、午後7時、8時、10時まで残業しないとなりません。6時間を毎に休憩のある学生時代のアルバイトに慣れていたので、毎日帰宅しても何もしたくない無気力状態で直ぐ寝たくなりました。そんな日々を繰り返していると、入社前に抱いていた仕事に対する期待や気持ちは徐々に失われ、売上や人間関係のストレスが溜まり、仕事を辞めたいと思うようになりましたが、それは新入社員の誰もが通る道だと考えて頑張りました。

しかし、日本語での電話対応は私にとって大きな障壁でした。学生時代にビジネスマナーを勉強しましたが、練習と実践はとても違い、それを克服するために、ビジネス会話の動画を見て勉強しました。

やがて、日本人との会話にも慣れていき、自分で言いたいこともきちんと伝えられるようになりました。しかし、ようやく仕事に慣れきた頃に新しい部署へ異動することになりました。また新しいことを覚えなくてはならず、夜遅くまで残業し、朝早く出勤する日々が続き、その生活がいつ終わるのか全く分かりませんでした。私はいつも一番早く会社へ行き、一番遅くまで会社に残り仕事をしていました。新人なのでいつも頑張らないといけないと思っていました。ストレスがどんどん溜まっていきましたが、会社を辞める勇気はありませんでした。

新たな挑戦

そんな日々を打破する為に何かしたいと日々悩んでいると、いつしか学生時代に抱いた夢を実現したいと考えるようになりました。それは、経験から得た情報を提供して留学生をサポートすることです。

日本人のブロガーが制作した動画をよく見ていましたが、留学生へ情報を共有するのに動画は有効な手段だと気付きました。そこで、日本語を学習するための動画を自分でも制作してみることにしました。ルームメイトと協力し、二人で「さむらいちゃん」というFacebookページを作成し、動画制作を始めました。

まず最初に、レストランやコンビニ、清掃など留学生が行なうアルバイトに関する動画を制作しました。

内容は、アルバイト中によく使われる言葉や、複数の意味を持つ言葉についての解説です。学校ではあまり出てきませんが、アルバイトの場面ではよく使われる言葉を来日したばかりの後輩たちに楽しく覚えてもらうことが、その動画の目的でした。

制作した動画にはたくさんの留学生から応援メッセージや、次回のテーマやコンテンツについてリクエストを頂きました。仕事が忙しくても頂いた応援メッセージやリクエストを読むと、二人共モチベーションが上がり、次の動画制作の励みになります。

そして、さむらいちゃんが徐々に広まるにつれて、自分もやる気が出てきていることに気付きました。会社に残るか辞めるか迷っていましたが、留学生に日本語を教えたり、日本での生活について良い情報を共有することが自分の好きなことだと実感したので、会社を辞める決断をしました。そして、日本語教育や日本へ留学する予定の学生をサポートする事業を起こすため、ベトナムへ帰国することを決意しました。

辞めた会社の仕事が入社前の期待と少しズレていましたが、後悔はしていません。その会社に勤務したことで、営業や接客対応が身に付き、ベトナムでの起業に必ず役立つと思っているからです。6年前に母の期待に応えるために、勉強を頑張って日本へ来ましたが、日本での生活は本当に大変でした。しかし、学校の勉強だけでなく、仕事やアルバイトを通じて色々なことを経験し、自分も成長できたと思います。

新たな挑戦

そんな日々を打破する為に何かしたいと日々悩んでいると、いつしか学生時代に抱いた夢を実現したいと考えるようになりました。それは、経験から得た情報を提供して留学生をサポートすることです。

日本人のブロガーが制作した動画をよく見ていましたが、留学生へ情報を共有するのに動画は有効な手段だと気付きました。そこで、日本語を学習するための動画を自分でも制作してみることにしました。ルームメイトと協力し、二人で「さむらいちゃん」というFacebookページを作成し、動画制作を始めました。

まず最初に、レストランやコンビニ、清掃など留学生が行なうアルバイトに関する動画を制作しました。

内容は、アルバイト中によく使われる言葉や、複数の意味を持つ言葉についての解説です。学校ではあまり出てきませんが、アルバイトの場面ではよく使われる言葉を来日したばかりの後輩たちに楽しく覚えてもらうことが、その動画の目的でした。

制作した動画にはたくさんの留学生から応援メッセージや、次回のテーマやコンテンツについてリクエストを頂きました。仕事が忙しくても頂いた応援メッセージやリクエストを読むと、二人共モチベーションが上がり、次の動画制作の励みになります。

そして、さむらいちゃんが徐々に広まるにつれて、自分もやる気が出てきていることに気付きました。会社に残るか辞めるか迷っていましたが、留学生に日本語を教えたり、日本での生活について良い情報を共有することが自分の好きなことだと実感したので、会社を辞める決断をしました。そして、日本語教育や日本へ留学する予定の学生をサポートする事業を起こすため、ベトナムへ帰国することを決意しました。

辞めた会社の仕事が入社前の期待と少しズレていましたが、後悔はしていません。その会社に勤務したことで、営業や接客対応が身に付き、ベトナムでの起業に必ず役立つと思っているからです。6年前に母の期待に応えるために、勉強を頑張って日本へ来ましたが、日本での生活は本当に大変でした。しかし、学校の勉強だけでなく、仕事やアルバイトを通じて色々なことを経験し、自分も成長できたと思います。

メッセージ

内定は最終目的ではなく、日本での就職の始まりです。

現在、就職活動中の人(内定をもらっている人も)は、入社後の仕事のイメージがズレたり、仕事がつまらないと感じることを回避するために、できるだけ沢山の会社説明に参加して、職場環境や実際の仕事内容などを事前に会社の人と相談してください。

入社後、もし自分には向かない仕事だと感じたら、再度自己分析をして、新しい進路を考慮しても良いと思います。なぜなら、私たちはまだ若いからです。

東京、2016年10月