トラン・ズントゥイ・バン

TRAN  DUONG  THUY  VAN

Profile & Message

2013年9月: ベトナムの大学を卒業

2013年~2019年: 銀行に1年間勤務した後、民間企業に転職して人事総務を担当

2019年12月: 夫の転勤で来日

2021年4月: The Naganuma Schoolで日本語を勉強し、9ヶ月でN3を取得

2022年11月: マイホームを購入し、千葉へ転居

2023年5月〜現在: AN LAC不動産会社でマーケティングを担当


日本に限らず、どの国の生活にもメリットとデメリットがあります。大切なのは、それを受け入れて、昨日の自分よりも今日の自分を良くしていくことだと思います。私の苦労もありながらの幸せな物語を通して、皆さんがより有益な情報や視点、あるいは「日本に定住する」ことのちょっとしたインスピレーションを得ていただければ幸いです!!

たった半日で日本へ行くことを決断

みなさん、こんにちは。私はヴァンと申します。今年32歳で、日本に来て約4年になりました。ベトナムでは、金融系の大学を卒業して、その後サイゴンの銀行や民間企業で働いていました。結婚してすぐに子供を授かり、子供が6ヶ月になる頃、夫が東京本社への転勤を会社から打診されました。もし、夫が転勤することになったら、私はベトナムでの仕事を辞めて、子供と一緒に日本へ行くことになります。なかなか大きな決断ですが、私たちはたった半日で考え、答えを出しました。「せっかくだから行ってみよう!」と2人で決めたのです。

私たちが日本に行くことを決断してから、出発するまでの期間は4ヶ月でした。これまで英語で仕事をしていたので、日本語は全く知りませんでした。そのため日本に行くことを決めた時、私はすぐに仕事を辞めて、ベトナムにいる3ヶ月間を活用して日本語を集中的に学ぶことにしました。当時、私自身も日本での生活がどのようなものか想像がつきませんでしたが、英語だけに頼らずに、現地の言語を積極的に学ぶべきだと思ったので、一生懸命に日本語を勉強しました。

2019年11月、夫は私たちよりも1ヶ月前に日本に行って、行政手続きや家探しをしていました。日本では賃貸住宅のほとんどは家具がついていない物件なので、入居後に、全て自分で購入する必要があります。また、借りる前に入居審査がありますが、外国人が住居を借りる場合は審査に要する時間が通常より長いそうです。夫は限られた時間で、必死にすべての手続きを完了し、私と子供が来日するたった数日前に鍵を受け取りました。私と子供が到着したとき、夫が購入できていた唯一の家具は、3人で寝れる2つのマットレスだけでした。最初に借りた家での食事は、段ボール箱をテーブルにして、スーパーで買ったお弁当でした。毎回その最初の日の夕食を思い出すと、厳しい時期だったなと感じます。そして数日後、キッチン用品、炊飯器、冷蔵庫、食器、洗濯機などを揃え、やっと普通の生活をスタートすることができました。

"住む"というフェーズが一段落した後、私は新しい壁、おそらく日本に来たときの最大の困難に直面しました。それは子供を保育園に通わせることです。日本の保育園に子供を預けることは、大学に入れるよりも難しいとよく言われています。幼稚園の方は比較的入れやすいが、3歳からしか受け入れてくれず、3歳未満の子供は保育園に通うしかありません。保育園が受け入れる枠よりも子供を預けたい家庭が多いため、両親がフルタイムで働く家庭を優先的に入園させることがほとんどです。競争率は非常に高く、入園するためには早い段階で出願書類を提出する必要があります。入園は4月ですが、書類は10月から準備します。私たちが日本に来たのは12月だったので、4月の入園には間に合いませんでした。また、子供もまだ小さかったので、新しい生活に慣れるために1年間は家で過ごすことにしました。

日本での新しい生活

日本での専業主婦の生活は非常に孤独でした。私はベトナム人が少ないエリアに住んでいたため、知り合いもあまりいませんし、まだそんなに日本語を話せない上に、日本人もあまり英語を話さないので、コミュニケーションを取るのに苦戦しました。子供と2人で家に引きこもって、日中は公園に出かけることが日課でした。夫の仕事は10時から19時まででしたが、通勤に1時間以上かかるので、朝早く出勤し、帰宅するとすでに子供は寝ていました。

初めの頃は本当に大変でしたが、その時期があったからこそ、今の自分があるといつも思います。なぜなら、その困難な状況が私の心身を鍛える機会になったからです。自分が仕事に行けない、子供が保育園に入学できない、言葉が通じない、毎日2人で家にいるしかないという状況を嘆く代わりに、私はそれを自分自身の性格を見つめ直し、これまでやりたかったこと、試してみたかったことを実現するための時期だと捉えました。仕事が忙しくてできなかったことがたくさんありましたが、やっとそれを実現できる時間をつくれました。

色々と興味のあるオンラインコースに申し込みました。パン作りやフラワーアレンジメントを学び、「携帯電話で美しい写真を撮る」というコースも受講しました。心理学やコミュニケーション、実践的な販売スキルなどを学び、ヨガやジムのスタジオにも通いました。週末は新しい友達を作るためにあちこちに出掛けました。 結局のところ、この時期一番良かったのは、ようやく私が自分とゆっくり向き合う時間ができて、より良い自分を見つけたことだと思います。

生活が徐々に軌道に乗ったタイミングで、新型コロナウイルスの流行が始まりました。 帰国するためにベトナム行きのチケットを予約しましたが、結局飛行機に乗ることができませんでした。 その代わり、 IT会社で働いている夫はオンラインで仕事ができるようになりました。 夫が家にいることで、私と子供はそれほど不安ではなくなりました。 そして翌年(2021年4月)、子供を保育園に入園させる条件を満たすため、私は日本語学校に入学することにしました。

願書の点数を上げて子供の入園率を高めるためでもありますが、毎日の生活や将来の就職のためにも必要だと思ったからです。そして、子供が家の近くの保育園に合格したので、子供も保育園に通うことができ、私も学校に通うことができました。9ヶ月間日本語学校に通って頑張った結果、JLPT N3を取得できました。 そしてコロナも徐々に落ち着いて、私たち家族はやっとベトナムに帰国して、2年間離れ離れになった両親と再会することができました。

マイホーム購入

夫は日本でもベトナムでもオンラインで仕事ができるので、3ヶ月ほどとかなり長くベトナムにいました。 この 3 ヶ月間は、私が両国での生活を見直し、比較し、将来自分がどうするかをよく考えられる時間になりました。3ヶ月間ベトナムに帰った後に再び日本に戻ると、思ったよりもここでの生活に慣れていることに気づきました。

私は新鮮な空気、はっきりと季節が変わる四季、子供が自立して、人との関わり方を学ぶために保育園に通う様子が大好きです。 日本で生活すると、ベトナムにいる時より、自分の家族との時間を確保することができて、自分自身をよりよく理解する時間があり、ほとんどのことを自分で決めて対処しなければならなかったので、考え方がより成熟しました。私たち家族全員が、この国に長く愛着を持ちたい、この地に「定住」したいと考え、自分たちの家族のための「家」を手に入れたい、という想いで、マイホームの購入を検討し始めました。

マイホーム購入には、探し始めてから契約を締結するまで半年ほどかかりました。マイホームの購入を検討する中で、私は色々と悩み、多くの質問を自分自身に問いかけました。なぜなら、私たち家族は日本に来てまだ3年未満で、永住権も持っておらず、銀行が融資を検討しやすい「良い」条件を満たしていないからです。自分でしっかりと日本の不動産のことを調べたり、聞きたいことを質問したりするのに必要な日本語能力もありませんでした。どの日本の不動産会社に問い合わせて見ても、難しいケースだと言われたり、仮に融資が受けられたとしても金利が高いよと言われました。

では、なぜ私はそれでもまだマイホームを購入したいのか?賃貸住宅だと、東京で2LDKのアパートを借りるのにはかなりのお金がかかります。そのうえ、2年ごとに更新料なども支払わなければなりません。家を借りるのは今はまだいいですが、長期的に住むなら「自分の家」にいる感覚のほうがいいと思います。日本の不動産会社に難しいと言われるのならば、ベトナムの不動産会社に打診してみようと思いました。当時、在日ベトナム人のコミュニティーの間で住宅の購入がブームとなっていました。そのニーズに応えるために、ベトナムの不動産会社が次々と誕生しました。コミュニティグループのいくつかのつながりを通して、当時ベトナムコミュニティで反響の良かった不動産会社と出会い、物件探しを色々と手伝ってもらいました。

何ヶ月にもわたって情報を調べ、家族の経済状況を考慮した結果、最寄りの駅から1.7km(徒歩25分、自転車で10分程度)の距離にあり、土地面積と床面積が比較的広い家を選びました。東京都心部まで電車で約40分。 我が家の場合は在宅勤務がメインなので、駅近ではなく、中心部から遠すぎない、広い家を優先して選びました。私の物件を選ぶ主な条件は、子供の学校の近く、スーパーの近く、周辺生活施設がすべて半径1〜2km以内にあることですが、この物件が全ての条件を満たしました。当時も円安でしたので、ベトナムから送金するときに為替レートの恩恵も受けられるだろうと考えました。現在、毎月の住宅ローンの支払いは、賃貸住宅よりも月に約1万ほど高いだけで、はるかに広い家に住めています。

 もちろん、月々の家賃とローンの差額に加えて、あらゆる種類の税金、電気代の増加、中心部から離れた家を購入したことによる交通費の増加など、住宅購入の背後にはまだ多くの隠れたコストがあることは承知しています。また、住むのをやめて家を売却すると、家の価値が大幅に減価償却することや、家を購入するとき、家具を揃えるのにかなりのお金がかかることもよくわかります。ただし、住宅を購入すると、その見返りに、良好な証明書のある住宅であれば、ローンの最初の 10〜 13 年間は国からの支援と税金の払い戻しを受けることができます。具体的には、私の家の場合、支援金100万に加え、初年度の税金として21万円の還付を受けました。インターネットで検索すると、マイホームを購入する場合とずっと賃貸で住む場合、出費がどれぐらい違うかについて具体的に分析した記事がたくさん出てきます。しかし、それらの数字は、「自分の家」に住んでいるときの「気持ち」を全部表現することができません。

 マイホームがもたらす精神的な価値は大きいと思います。約10年間日本に滞在するつもりで、特に幼い子供がいる家庭の場合、子供のためのスペースと質の高い生活が必要な場合は、住宅の購入を検討してみてはいかがでしょうか。 もちろん、多くの要素に基づいて検討する必要がありますが、自分で調べることができればそれに越したことはありませんし、不動産コンサルタントに依頼して、より包括的な全体像を描くこともできます。もちろん、不動産営業マンなら誰でも顧客に家を買うようにアドバイスをしたいと思っていますが、よく話を聞き、より多くの情報と根拠を持って検討し、選択をする必要があると思います。 選択はあなた次第です。 聞き上手なコンサルタントを選びましょう。彼らはあなたの話や家族の状況を理解し、あなたが検討できる合理的な選択肢をアドバイスしてくれます。

 購入後は、家を好きなように装飾したり、自分の好みに合った家具を購入したりできました。娘には自分の部屋があり、夫には広々とした仕事部屋があり、夫婦にも自分にできるスペースがあります。 広々としたキッチンで家族のためにおいしい料理を作ることができ、手入れができる小さな庭があり、友人との集まりを企画するという、私の趣味にもぴったりの広いリビングルームがあります。旅行に来るベトナムの友人たちも、快適に滞在して現地の生活を体験できる場所があります。来年、祖父母が日本に訪れるのですが、家族全員が数か月一緒に快適に暮らすのに十分な大きさの家です。これらすべてが、私にとって自分の家をとても気に入っている理由で、毎日家の手入れをするのが楽しいです。 しかし、こんな気持ちになれる住宅を借りるために、毎月これ以上のお金を費やす勇気があるなら、私はあえて何も言いませんが、そうでないなら家を買うのが合理的だと思います。

自分に合う仕事を見つける

最初に述べたように、私は大学で金融を専攻し、ベトナムで7年以上働いた経験があります。 日本に行くことを非常に早く決めたので、あまり新生活のための準備をする時間がありませんでした。夫婦2人とも日本語が出来ず、子供もすぐには保育園に入れず、さらにコロナ禍ですべてが一変し、私は仕事に行くことを考える余裕がありませんでした。日本に来て最初の1〜2年は、ただ家にいて子供の世話をし、日本語を学び、家事に慣れ、生活のペースに適応するだけでした。

家と子供のことがやっと落ち着き、語学学校で勉強したことで日本語能力がN3まで上達し、ネットで求人情報を検索できる程度になったので、就職を考え始めました。何年も仕事をしていなかったので、気持ちとしては、「本当に仕事に行きたい」という感じです。私はいくつかの求人に応募してみましたが、フルタイムかパートタイムか迷っていました。仕事と家庭を両立させるために、自分の時間をどのように配分するかずっと悩んでいました。

一度、銀行の選考で面接を受ける機会がありました。その会社はフルタイム採用のみでしたが、ここで働きたいと思ったため、この機会を逃したくないと思い、よく考えました。しかし、最終的に私が断った理由は、近いうちに2人目を出産する予定があったので、フルタイムという働き方は現時点では良い選択ではないと思ったからです。

そしてその瞬間、別のチャンスがやって来ました。以前、住宅購入の手続きをサポートしてくれた不動産会社が、フルタイムのセールスマーケティングの広告を掲載したのです。仕事内容が私の経験と性格にとてもマッチしていると考え、思い切って応募しました。フルタイムで働けないので、営業は難しいが、マーケティングの仕事をオンラインでさせてもらえないかとベトナム人の社長さんに提案しました。そして、思わぬことに社長はその場ですぐ同意してくれました。あの時は「仕事が人を選んだ」なのかもしれないと思っています。あまりにも適した仕事だったので面接は10分程度で終わりました。

今はアルバイトという形で仕事をしていて、自宅からリモートでできるようになりました。2年間育児と家事に専念した後、やっと仕事に復帰できました。この柔軟な勤務形態と時間のおかげで、仕事の渦に巻き込まれることなく、仕事を楽しくやりながら、家族を大切にし、自分の趣味を楽しむ時間も確保することができています。


メッセージ

 現在、私と夫は、日本の生活にもっと馴染むために、さらに日本語を学ぶことを目標としています。子供が幼い頃はベトナム語を上手に話せても、大きくなればなるほど、身につける知識や文化は主に日本語になるので、私たちも努力しなければなりません。子供にできる限りの部分で一緒に付き添っていきたいです。

日本に限らず、どの国の生活にもメリットとデメリットがあります。大切なのは、それを受け入れて、昨日の自分よりも今日の自分を良くしていくことだと思います。私の苦労もありながらの幸せな物語を通して、皆さんがより有益な情報や視点、あるいは「日本に定住する」ことのちょっとしたインスピレーションを得ていただければ幸いです!!

千葉、2023年12