Sumeragi Jenny 

Hoang Thuy Duong


Profile & Message

2012 ドイツの会社の日本語支社へ転勤

2013     アメリカ小売業界の大手企業で、日本市場のファッション部を担当

2018   フルタイムの仕事をしながら小さい会社を起業

みなさんはよく日本の職場は大変でストレスが多く、外国人が活躍できる場もあまりなく、つまらなくて退屈だと文句を言っています。しかし、私は7年間日本で働いている中で、自分が活躍できるかは自分が積極的に行動するかによって決まるのだと実感しています。今の仕事がつまらないのであれば自分のやり方次第で変えることはできます。

困難は成長のチャンス

私はベトナムの大学で日本語を勉強していましたが、日本との縁は、ドイツの会社で勤めていたときに日本支社へ転勤したことがきっかけです。大学生のときから日本語を勉強していたので、日本での日常生活はそれほど困りませんでした。またほとんどの仕事は英語だったので、最初の1年間はトラブルもなく、順調でした。その当時は契約社員として勤務していて、契約満期となるときに、私は日本で無期の正社員として安定して働きたいと考えて転職をしました。転職先の会社はアメリカの小売業界大手の企業です。そのアメリカの会社の人事担当者とは、勤めていたドイツの会社が国際ジョブフェアに参加するので、私も手伝いとしてそのジョブフェアに参加したときに出会いました。そのアメリカの会社は当時、日本で働く正社員を募集していたこともあり、応募し、何回もの面接を経て、晴れて入社しました。


今はこのアメリカの会社で日本市場のファッション部を担当しています。前職のドイツの会社では業務が英語で行われていたこともあり、日本にいながらほとんど英語しか使いませんでした。新しく入社したこの会社はアメリカの会社ですが、スタッフのほとんどが日本人なので、すべてのミーティングやコミュニケーションは日本語で行われています。

日本語は日常会話レベルでは問題ありませんでしたが、大学卒業してからずっと英語で仕事をしていたため、生活で使う日本語と仕事で使うビジネスの日本語は大きく異なることに実感し、ビジネスレベルの日本語はとても大変でした。


入社当初、毎回のミーティングでみんなが日本語で話している内容を理解しようと頑張っていましたが、なかなか全部を理解することはできませんでした。スライドや資料があるときはメモをして、あとでわからないことを調べていました。しかし資料がなかったり、スライドがスクリーン上にしか投影されなかったりしたときは、他のやり方でミーティングの内容を確認しなければなりませんでした。


日本語を聞き取ることも大変でしたが、それ以上に日本語で話す、伝えることはもっと大変でした。入社当初は日本語力が十分でなかったので上手く話すことができず、相手に伝わりませんでした。伝わらないプレッシャーが大きくのしかかり、英語を使う他の外資系の仕事に転職しようかと考えたこともあります。しかしこのままずっと日本で働くなら、この状況を逃げずに自分の日本語力という弱みに向き合い乗り越えなければならないと思い直し、逃げずに弱みを克服する方法を探すことにしました。


日本語の聴解力を高めるため、積極的に上司や周りの同僚たちに協力してもらい、自分がわからないことは質問し、説明してもらいました。毎回ミーティング後は上司の下へ行き、わからないことを質問してメモをしました。上司が忙しいときは他の同僚に質問していました。質問する相手も誰でもいいのではなく、しっかり選ばないといけません。毎日、仕事中の様子を見て、優しそうな人や聞きやすい人を見つけて、その人たちに質問するようにしていました。毎日、毎回自分がわからないことを質問していたので、最初のころは申し訳ないと思っていましたが、質問しないとずっとわからないままで、結局、仕事が上手く進みません。なので、恥ずかしがらずにわからないことはひたすら聞くべきだと思い、わからないことは質問し続けました。そしてこちらからの質問に答えてもらうために私も努力をしていました。いつも笑顔を絶やさず、休憩時間には積極的に周りの人たちへ声をかけるように心がけていました。日本語が上手でなくても、笑顔で声をかければ良い人間関係を築くことができ、みんなは親切に接してくれました。


聴解力は質問を繰り返して伸ばしていきましたが、日本語で自分の考えやアイディアを周りの人たちに発信することはまだできませんでした。なので、他のやり方を考えて実践していました。ミーティングで出されたことや仕事に関することを真剣に観察し、メールや報告書に自分の意見やアイディアをまとめて、みなさんへ提案しました。文章にすると重要なキーワードや言葉を調べることができ、自分でも内容を整理することができます。また、日本語が十分でなくても伝えたいことがわかるように写真を入れて、口頭で上手く伝わらなくても伝わるような工夫もしていました。


提案書を作ったときには、同僚の人に頼んで内容を添削してもらっていました。その同僚は英語が好きなのですが英語を使う機会があまりないため、私はお礼としてよくその同僚をランチに誘って英語で会話していました。あまり関係性が強くない人に添削のお願いするのは頼みにくいのですが、私たちはお互いにメリットがありwin-winの関係なので、お願いしやすく、その人も喜んで引き受けてくれます。相手とwin-winの関係を築くためには、周りの人たちのことを観察することが大切です。相手にメリットがあることは何だろうと考え、相手のために行動することで、自分が困ったときに頼みやすくなります。

毎日、少しずつ努力を積み重ねて、積極的に周りの人にわからないことを質問したり、工夫して自分の意見やアイディアを発信したりすることで、少しずつ仕事のスピードに追いつくことができるようになり、会社も私の能力を評価してくれるようになりました。そして日本語も上達していきました。自分の弱みと向き合ったからこそ、成長することができました。

積極的な交流でストレスを解消し、視野を広げる

仕事での困難に直面したとき、それを乗り越えるためにはストレスを解消しないと仕事を頑張ることはできません。ストレスを解消できる場を見つけて、次の日には頭をすっきりさせて仕事に臨むことが大切です。


私のストレス解消方法は、週末や平日の仕事終わりの夜7時や8時にイベントに参加して友達を作ることです。最初、まだ知り合いがあまりいないときは国際的なイベントやパーティーをインターネットで検索して、興味のあるイベントすべてに参加していました。イベントで友達ができるようになると、その友達が他のイベントを紹介してくれるので、面白そうなイベントには参加していました。なので、仕事が終わってから毎日イベントに参加していた時期もありました。私が参加していたイベントは、大半の人がヨーロッパやアメリカなどの外国人で、日本で働いている若者でした。他にも外国の文化が好きなオープンな性格の日本人も参加していて、よく飲みながらみんなの生活や日本に対する感想、日本人から見た外国人に対する印象など、普段聞くことができないようなこともたくさん聞くことができ、ストレス解消だけでなく、自分の視野を広げることもできました。


ただ家と職場での往復ではつまらないです。私がイベントに参加するのは、毎日の生活が楽しくなり、いろいろな人に出会うことができるからです。中には無料のイベントではなく、お金のかかる有料なイベントもありますが、有料のイベントに参加することは一つの投資だと考えています。有料のイベントに参加することで人間関係や知識や視野も広がり、仕事のストレスも解消されます。そして今の主人ともイベントを通して出会いました。

だんだんイベントのことがわかってくるとただ交流するだけのイベントへの参加は減り、教養や知識の共有などのイベント参加するようになってきました。その中でVPJ(Vietnamese Professionals in Japan)というコミュニティが行っているイベントがあります。これは日本の企業で働くベトナム人のコミュニティで、大手企業で働く経験豊富な先輩が後輩たちへ経験や知恵を伝えるセミナーや、ある専門的なテーマに関して数百人規模が参加するキャリアシェアリングのイベントなどを定期的に開催しています。まだ来日したばかりで人脈もネットワークもないといった若いベトナム人たちも、先輩たちの経験からの学びだけでなく、優秀なベトナム人たちとのネットワークも築くことができるので、自分の将来につながります。私はこのコミュニティにボランティアとして参加して、イベントの開催の手伝いをしています。

チャンスは自分で作る

日本で働いていると、日本人に比べて外国人の自分は活躍する場がない、日本人よりも給料が低いと感じるという人が多いですが、私や友人たちは会社や上司が自分の能力を正しく評価するためには自分でチャンスを作らないといけないと思っています。指示されたことをただ行うだけではダメで、常に周囲の状況を観察し、自分から積極的にアイディアなどを発信し、行動しないと目立つことはできません。


私が勤めている会社はアメリカの小売会社なので、仕事の日ではない休日も買い物へ行ったときには、どうやったら消費者たちの目に商品が留まるのか、買いたくなるのだろうかといつも考えています。街中でヒントやアイディアを見つけたらスマートフォンで写真を撮って、次の日には提案書を出します。他にも、日々の仕事の中で改善できることや、仕事の効率や効果から考えたアイディアを周りの人や上司へその場で提案することも心掛けています。日本語がまだ上手でないときでも、伝えたい内容を整理し、キーワードを選び、ゆっくりのスピードでも正しく伝えるようにしました。頑張って何回も提案をしていると、努力している姿に気づき、評価してくれるようになります。その結果、以前よりも大切な仕事を任せてもらえるようになりました。


加えてもう一つ、自分が活躍できる場は自分から探していくことです。採用後の配属先が適切な配属先かどうかわかりません。今の配属先はよくない、ポジションに不満だとは思わずに、周りの人たちを見てください。他の部署の仕事を見たり、人事部の人と話したりして、自分の能力を生かせそうな部署やポジションならば、人手が足りないとき、自分から人事の人や上司に申し出たほうが良いです。私は入社後、マーケティング部に配属になりましたが、その部署の業務のほとんどが日本語で行われていました。まだ日本語力が全然足らない時だったので、とても大変でストレスも多かったです。何より得意の英語が生かせず、仕事でも活躍できませんでした。そのとき人事部の人に相談して、英語を使う今の部署に異動をお願いし、晴れて現在のファッション部に異動となりました。これは日々、人事部の人とコミュニケーションを取ったり、他の部署の人たちとも話をして、どんな仕事をしているのか情報を得たりして良好な人間関係を築いたので、チャンスを掴むことができたのです。


そして会社の飲み会は、他の部署の人たちとコミュニケーションしたり、社内の情報を収集したりするにはとても良いチャンスです。普段の仕事中には聞くことができないような話も聞け、日本には「飲み二ケーション」という言葉があるように、飲み会の場ではコミュニケーションが活発になります。日本語があまりできないと飲み会に行っても何を言っているかわからないし、退屈だと思うかもしれませんが、参加しないのはもったいないです。言葉がまだ十分わからなくても、笑顔で参加して、自分に興味がある話には加わればいいのです。つまらないから行かないのではなく、飲み会ではいろいろな人と話ができ、情報を得ることができる場なので、行ってみてください。


私は入社後に困難なことがあっても成長のための訓練だと思って向き合い、乗り越えてきました。その結果、自分自身を成長させることができました。また、仕事は大変でストレスがたまります。そんな時、私は自分の興味のあるイベントに参加したりしてストレスを解消し、自分の視野も広げています。自分に合ったストレスの解消の場、生活を楽しくする方法を是非、探してみてください。そして、日本の会社で働く外国籍社員である自分たちの活躍の場は自分で作らないとありません。積極的に自分から発信しないといけません。活躍の場がないからといって他の会社へ転職するのではなく、今の会社で自分の能力や特技を生かせる仕事やポジションがないか観察し、他の部署の人たちや人事部の人たちとも関係性を持ち、自分で活躍できる場を見つけることが重要です。会社の飲み会の場も人間関係を良くしたり、情報を収集したりすることができる機会なので、参加してみてください。

メッセージ

日本は労働環境が大変で、仕事のストレスも大きく、外国人が活躍できる場が少ないと言いますが、7年間日本で働いている経験から言うと、日本が大変でつまらないか、活躍できるかどうかは自分が積極的に一歩踏み出して行動するかによって決まります。すべては自分次第なのです。私の経験をみなさんにシェアし、一つでもみなさんの日本での生活に役に立てば嬉しいです。

神奈川、2018年12