HOANG THE HUNG


Profile & Message

2006~2009 県内トップ高校で物理学を専攻

2009年~2013年 ハノイ貿易大学国際経済学部を専攻

2012年~2014年 日本・ベトナム経済連携協定(EPA)のプロジェクトに従事

2015年~2017年       来日し、事業創造大学院大学でMBAを取得

2016年           大手金融機関のグループ会社で1カ月半インターンシップする

2017年~         大手金融機関のグループ会社に勤務

キャリアや進路に悩んでいる人たちへ1つアドバイスするなら「視野を広くしましょう」。視野を広くすることで、社会が何を求めているのか、自分は何をしたいのか、どのように社会に貢献できるのか、そして自分は次に何をするべきなのか、わかるようになりますよ。

いろいろな体験がチャンスにつながる

私は物理に興味があり、中学卒業後は県内トップの高校の物理専攻コースに入学しました。高校3年間はずっと物理の勉強をしていて、全国レベルの大会では3位に入賞したこともあります。物理にのめり込んで勉強していたので、周りの人たちは、私が大学に進学しても物理を専攻すると思っていたようです。私も一時期、工科大学の物理学専攻へ進学することを考えましたが、物理以外の専門にもチャレンジしたいと思い、貿易大学の国際経済学部に入学することに決めました。貿易大学は対人関係の調整能力やリーダーシップ能力といったソフトスキルを身に付ける活動やクラブが盛んで、将来のためにはこのソフトスキルを磨くことも大切だと思っていたので、貿易大学を選びました。


貿易大学は外国語の授業が多い大学です。文系の人たちはそもそも英語を勉強している人たちなので、外国語の選択で英語を選んでも上位に立つことは難しいと思い、私は思い切ってみんなと同じスタートに立てる日本語を選択しました。その頃はまだ日本ブームではなかったので、日本語を勉強している学生も少なく、チャンスがたくさんありました。


これからの自分のキャリアを考えたとき、日本とのかかわりが多いので、大学生の時にできるだけ多く日本との接点を持とうと考えていました。大学3年生の時にはVJSC(日越学生会議)の活動に参加したり、VJCC(ベトナム・日本人材協力センター)のアルバイトをしたりしていました。VJSCとは、VJCCおよび国際協力機構JICAの支援を受け、2007年8月に設立された学生団体で、メンバーはハノイの各大学で日本語を勉強している学生や日本のトップ大学の学生からです。また、ハノイ工科大学と日本の理系大学とのJICAプロジェクト“ESCANBER” でもアルバイトをしていました。そして大学4年生時は、日本・ベトナム経済連係協定(EPA)のプロジェクトで正社員として働いていました。そこでは日本人も働いていたこともあり、日本へ行こうと考え始めました。EPAでの仕事はやりがいがあり、職場環境も良く、給料は月給1000$以上と待遇も良かったのですが、思い切って日本へ行くことに決めました。

日本に来てから

経済などが専門の文系学生にとって、ベトナムで日本の企業に就職できるチャンスは少ないです。なので私は留学生として日本へ行くことに決めました。しかし留学を決めたときは既に日本の大学入学試験は終わっていて、残っていたのは新潟県にある事業創造大学院大学のMBAコースだけでした。この事業創造大学院大学は、社会人コースもあるように、学生の4分の3が日本の社会人で、残り4分の1はヨーロッパやアジアからの留学生という大学です。日本のことは社会人の人たちから教えてもらえて、また、留学生も多くグローバル環境も味わうことができるので、私はこの大学に入学することに決めました。


日本へ留学生として来日したものの、私は日本で就職することは考えておらず、2年間勉強してMBAを取得したらベトナムに戻って働くつもりでした。しかし、いくらMBAの知識が優れていても仕事で使えないと意味がありません。実際の業務で学んだ知識を生かすことが大切なので、帰国する前に日本のファイナンス業界で仕事の体験をしたいと考えていました。


 以前、EPAのプロジェクトに参加したときに日本の中小企業の職場を体験したことがあるので、今度は大手企業でインターンシップをして経験を積もうと思いました。貿易大学や事業創造大学院大学での勉強やたくさんの本から、外国語とソフトスキルそしてファイナンスの知識があればどんな環境でも働くチャンスがあることを知りました。なので、私に今不足しているファイナンスの知識を取得するために、大手の金融企業でインターンシップして経験を積みたいと考えました。

ブルーオーシャン戦略

私がインターンシップしたいと考えていた企業は、ファイナンスのプロフェッショナルの大企業で、ブランドのイメージカラーにも惹かれたので、是非ともインターンシップしたいと思っていたのですが、トップ大学ではない大学の外国人留学生にとっては大企業でのインターンシップは狭き門です。普通の学生たちと同じように選考を受けてではインターンシップのチャンスはつかめないと考え、違う道を探し始めました。


私はまず大学のホームページからインターンシップ希望先の企業とつながりのある先生を探しました。いろいろと探していくうちに、1人つながりのある先生を見つけることができました。その先生は自分の専門と異なる専門の先生でしたが、何とか自分の顔を覚えてもらいたい一心で、この先生の科目はすべて受講し、授業中は積極的に発言しました。また、その先生の授業に関する外国人留学生の勉強会を発足し、リーダーとしてその勉強会を開催していました。様々な取り組みを通して先生に私のことを覚えてもらってから、私がある企業でインターンシップしたいという熱意をつづったラブレターを先生へ送りました。私の熱意が伝わったのか、先生が企業へ私のことを推薦してくれたので、私は1カ月半のインターンシッププログラムに参加できることになりました。


最初は1カ月半だけインターンシップするつもりでしたが、実際に職場で働いていくうちに、職場の雰囲気も良く、仕事もやりがいがあるのでずっと働きたいと思い始めました。そこで、短いインターンシップの期間で一生懸命自分をアピールすることにしました。たとえば、大学卒業してすぐに入社した人よりも大学院生である自分の方が資料作成や市場調査、レポート作成は上手です。なので、このような仕事はすべて自分から手を挙げて引き受けました。自分のことを積極的にアピールしました。そして頑張りが会社から評価され、インターンシップの最後には内定をいただくことができました。普通の方法では到底叶わないと言われる夢や目標も、違う道を探すことで叶えることができます。自分のことは積極的にアピールすることが評価につながるのです。

常に明るく、前向きに考える

私が現在務めている会社はファイナンス業界の中でも大きい会社なので、周りには優秀な人が多くいます。また、厳しい業界でもあり、常にファイナンスに関する最新の情報を知っていないと追いつきません。毎日毎日情報収集していないとみんなに追いつけないので、常に勉強が必要です。限られた時間の中でたくさんの情報を効率的に収集するためには、上司や先輩に価値の高い情報を教えていただいたり、新聞記事の引用元を探して読んだりしています。新聞記事の引用元のサイトでは、“NEWS PICKS”(https://newspicks.com/)というページがオススメです。さらにgoogleのメールマガジンに登録しておけば、関心のあるキーワードが載った新しい記事をすぐに入手することができます。会社に入社し、社会人になるといろいろなプレッシャーもありますが、一番大切なことは、前向きに、そして積極的に考えて、自分の気持ちをコントロールすることです。また、しばしばベテラン社員が担当するような難しい業務も任されることがあります。私はまだ若く、社内でも数少ない外国籍社員なのでその仕事に対するプレッシャーももちろんありますが、それよりもチャレンジしてやろうという気持ちの方が大きいです。他の部署にいる同僚が時々、大丈夫か、ストレスたまっていないかと心配してくれますが、現状に不平不満や文句を言うのではなく、これはチャンスだと前向きに捉えて、自分のモチベーションを高めるようにしています。大きな壁やプレッシャーを乗り越えるためには、常に前向きに考えることが大切です。 

新しいネットワークづくり

会社での仕事のほかにも活動をしています。大学卒業後に新潟から引っ越し、東京での新生活を始めましたが、その当時、東京にベトナム人の知り合いはいませんでした。新しい生活に慣れてきてからいろいろなベトナム人コミュニティのイベントに参加し始め、VPJ(Vietnamese Professionals in Japan)に出会いました。

 

10月にVPJのキャリアシェアリングというイベントに参加し、ファイナンス業界の先輩の経験談を聞きました。先輩の中には、MPKENのASEAN SEMPAIに出ているフンさんもいて、フンさんの話に刺激を受けました。このVPJの活動はグループの活動に参加するだけでなく、プロジェクトを自分でつくり、プロジェクトリーダーとして運営することもできます。大企業だとまだ若い自分がプロジェクトを運営することはできませんが、このVPJでは自分でプロジェクトを立ち上げて運営することができるので、プロジェクトリーダーとして活動し、早い段階で様々なスキルを身に付けることができます。もちろん自分の時間は減ってしまいますが、前向きに考えるとこれは自分を磨くチャンスにもなり、自分だけでなくコミュニティに参加する人たちともwin-winの関係になるので積極的に取り組んでいます。私はこのコミュニティの先輩とともに、将来、ベトナムの子どもたちが今よりもさらに世界へ出て活躍できるように様々な活動を通してベトナムの印象をもっと良くしていきたいと思っています。

メッセージ

物理学を専攻していた高校生が貿易大学に進学し、VJSCの活動への参加やJICA、VJCCでのアルバイト、そしてEPAプロジェクトでの就労経験を積み、日本へ留学しました。その後、留学生として日本の大学でMBAコースで学び、今では日本の大手ファイナンス企業のサラリーマンとして働きながら、ベトナム人コミュニティの活動にも貢献しています。私は今、とても幸せです。これからの5年後、10年後、自分はどうなっていくのか想像して今からワクワクしています。


キャリアや進路に悩んでいる人たちへ1つアドバイスさせていただくと、「視野を広くしましょう」。視野を広くすることで、社会が何を求めているのか、自分は何をしたいのか、どのように社会に貢献できるのか、そして自分は次に何をするべきなのか、わかるようになりますよ。


ここまで私のストーリーを読んでくれた皆さん、ありがとうございます。私の経験がみなさんにとってお役立ちできたら嬉しいです。

東京、20191