直人潘 

NAOTO PHAN

Profile & Message

2009年:      貿易大学に入学

2013年〜2014年:    AIESECのグローバルインターンシッププログラムで日本に滞在

2014年:       ベトナムに帰国し大学を卒業後、1年以上働く

2015年:      日本に戻り、公共政策の修士号を取得

2017年:      大学院を卒業し、日本企業で管理会計のポジションに就く

2020年:        スウェーデンの自動車産業の企業に転職

          米国公認会計士資格取得

2023年初頭:    BIG4(大手監査法人)に転職

           財務会計のシニアコンサルタントとして働きながら、

          自身のコミュニティーの起業支援プロジェクトを展開

私は日本の未来に信頼を寄せています。この国では起業を含め、誰にでも機会が提供されています。自分の貢献を通じて、日本に住む外国人がビジネスや起業の機会をより多く掴めるようにしたいです。これは私にとって重要なことであり、この目標に対して積極的に取り組んでいきたいと思っています。

私と日本の縁

2009年、高校卒業後、私は貿易大学ホーチミン市校に合格しました。私たち学生は日本語または英語のいずれかを選択することができました。私は田舎出身であり、都会の学生と比べて英語を学ぶ環境に恵まれていなかったため、ほとんどの人がゼロから始めることになる日本語を選ぶことにしました。そうすれば、他の学生たちと同じレベルでスタートできると考えたからです。

私の地元の生活や学習はとてもシンプルで、ソフトスキルがほとんどなく、大学の課外活動などにはなかなか追いついていませんでした。貿易大学のファイナンス・バンキング学科のカリキュラムはかなり厳しく、専門科目の参考資料のほとんどは英語でした。そのため、学校で日本語を学ぶ一方で、英語も自主的に学び、専門文献を理解するために努力しなければなりませんでした。

学校では、早いペースで膨大な量の日本語を学びながら、英語を独学で勉強し、足りないソフトスキルを補うために学外活動もしていました。そのため、貿易大学に入学した最初の2年間はかなり忙しい日々でした。生活に慣れるために努力しましたが、当時の私にとって、ホーチミン市での生活はプレッシャーが多く、競争が激しいものでした。

私の大学生活は、AIESECのグローバルインターンシッププログラムに参加する機会を得たことで、新しいフェーズに入りました。AIESECのプログラムでは、夏休みにインドネシアと台湾で各所6週間のインターンシップに参加し、4年生の時には5ヶ月間、日本でインターンシップをしました。活気に満ちたホーチミン市では、自分が周囲の流れについていくことに疲れることが多かったですが、5ヶ月間の京都大学での生活とインターンシップは、非常に穏やかで快適な日々でした。京都の綺麗な自然に癒され、周りの日本人の皆さんもとても親切に接してくれました。この居心地の良い環境は、自分が求めていた場所であると感じました。ここでは多くのことを学び、経験することができますが、周囲の人々に追いつくために必死になる必要はありません。5ヶ月間のインターンシップを終えて、私はベトナムに帰国しましたが、なるべく早く日本に戻って学び、仕事をするための道を探すことを決めました。

京都大学AIESEC会員と交流

たくさんの苦難に直面した2年間の留学生活

帰国してから1年間、私は日本で修士号を取得するために日本の大学を探しながら、仕事をしてお金を貯めることに多くの時間を費やしました。

知り合いと連絡を取って色々と調べていった結果、AIESECで知り合った友人が山梨学院大学教師を紹介してくれました。山梨学院大学では公共政策が唯一の修士課程であるため、ここに進学するならばこの専攻しか選ぶことができませんでした。大学時代の専攻を選べないことは少し残念でしたが、日本への留学を遅らせたくなかったので、山梨学院大学に応募することを決めました。2015年4月、入学手続きとビザ申請を完了し、私は修士課程の留学生として日本へ戻りました。

来日当初は、多くの困難に直面しました。プログラムに予定外の変更があったため、調整に時間がかかりました。また、私の住んでいる地域では、都市部と比べてアルバイトを見つけるのも大変でした。しかし、頑張って探した結果、ぶどう畑や桃農園、またはお菓子工場など、外国人も雇ってくれる数か所で働くことができました。

それだけではなく、保証人や自分を支えてくれた人も含めて、多くの人との関係に問題が生じたため、必要な手続きや書類を再度取り直さなければならず、そのことにはかなりの時間を費やしました。。今でもその時のことを振り返ると、非常に恥ずかしく、後悔しています。あの頃は未熟で、自分の行動が多くの人々に迷惑をかけることになるとは思ってもみませんでした。

人生は山あり谷ありです。これらの波乱に満ちた経験も私の人生の一部であり、深い谷底を歩んだことで、後になって困難に立ち向かうための強さを身につけることができました。何があっても私は挫けず、自分の目標を諦めることもありませんでした。

2年目に入ると、私は嬉しいことにロータリーの奨学金を受け取りました。かなりの金額の奨学金だったので、月々の学費や生活費に対して心配する必要がなくなりました。アルバイトの時間を削り、より集中して学業に打ち込み、「日本で就職先を見つける」という新しい挑戦を始めました。

就職活動を始めた当初はとても不安定で、様々な問題にも直面しました。自分が何の職業に興味があるのか、何がやりたいのか、履歴書をどのように書けばいいのかがはっきりしなかったため、私は様々な業界に応募しました。多くの企業に履歴書を送り、東京だけでなく大阪や香川にも足を運びました。数ヶ月の間にたくさんの履歴書を送り、数多くの面接を経験した結果、最終的にいくつかの企業から、総合職や経理のポジションで内定をいただきました。いくつかの選択肢で悩んだ末、私は経理の仕事を選ぶことにしました。理由は、仕事内容が明確であり、総合職より給与も高かったからです。

静岡でロータリー米山奨学金の関西地区学生と交流

会計の仕事との出会い

経理の仕事に関わっていくうちに、この仕事は本当に自分に合っていると感じるようになりました。経理の仕事は完全に数字に基づいており、人の感情によって左右されることはありません。これは私のように感情豊かな性格の人にとって適していると思います。なぜなら、感情的な要素が少ない環境で働くことで、自分の新たな側面に触れるような感覚があり、自分の可能性を広げられるからです。私はこの職種で長期的にキャリアを積み、スキルを向上させ、必要な資格を取得する決意をしました。

最初の会社で働いている間、私は簿記や米国公認会計士資格といった専門分野に関連する資格を学び始めました。仕事に関連する知識を学びたいという強い意欲から、仕事と両立しながら資格の勉強をするために、とても努力しました。仕事が7〜8時間に及ぶ日々でも、帰宅後は食事を済ませてから夜遅くまで勉強することが続きました。私の目標は単に資格を取得することだけでなく、これらの資格を学ぶことでさらに知識を得て、より良い仕事をすることです。長期間の努力が報われ、私は2つの資格を取得しました。

浜松で日本人起業家と交流

新天地で新しい仕事に挑戦

最初の会社で数年働いた後、私は専門知識をより深める機会があまりないことに気が付きました。将来的に営業コンサルティングの分野で専門的に活躍したいと考えていたので、もっと大きな企業に転職することを決意しました。そうすることで、より大規模かつ複雑なプロジェクトに関わる機会が増え、この分野での能力とスキルを向上できると考えたのです。

転職を決めてからは、Web上の求人情報だけでなく、金融分野で転職を考えている人々を対象としたジョブフェアにも参加しました。そこでブースを出していたスウェーデンの有名なトラックメーカーは、再買収された後の移行期であり、会計管理、内部統制などに関連するスキルを学ぶには良い機会だと感じました。

また、BIG 4の1つの会社のコンサルティング職についての説明会にも出てみました。しかし、その時点で自分のスキルがまだこのポジションに合わないと感じたため、スウェーデンの企業に応募することに決めました。この会社とは縁があり、選考を通過することができました。

2つ目の会社では、Company Controlという仕事を担当しました。スウェーデンの親会社が数十億ドルの取引で一つのトラックユニットを同業界の日本会社に売却したので、私が入社した時期は移行期であり、内部統制や会計管理、経営システムなどの内部システムを新しく導入する作業が多かったです。その結果、ここで約3年間働く中で、これらの分野に関連する実践的な経験をたくさん積むことができました。

元同僚との再会

コミュニティーの起業支援プロジェクトを展開

2つ目の会社で3年間働く中で、私は自社の経営を管理するためのビジネスに関連する知識を多く学びました。そのため、他社の運営に対するコンサルティング経験を積むために転職を決意し、BIG 4 の1つの会社にコンサルタントのポジションで応募しました。

複数の企業との面接を経て、経験やスキルが学歴よりも重要な要素であることに気付きました。実務経験があると、面接にも自信を持って臨むことができます。これまでの2社での実務経験によって、BIG 4の選考を乗り越える自信を持つことができました。BIG4に応募したいが、まだ資格や学歴を持っていないという人は、経験を積むことで自信をつけて挑戦してみると良いでしょう。

BIG 4に採用された後、私は財務会計シニアコンサルタントの職務に転向しました。会社の本業と並行して、現在は自身の専門知識と経験に基づいて、外国人起業家をサポートするプロジェクトを進行中です。

私は、複数名の外国人の起業家をサポートして、日本でのビジネス計画の立案や内部統制および経営システムに関するアドバイスをしています。具体的には、ビジネス計画の作成、実施段階でのサポート、ビジネスの予算策定、キャッシュフローやコスト、固定資産のバランスのサポートなどです。同時に、企業内部の管理についてアドバイスし、効果的な経営サイクルの構築を手伝います。

私の感覚によると、現在、日本では外国人のための企業設立、ビザの申請、労働者の雇用などをサポートする会社は多くあるが、企業の運営、内部管理に特化した場所はまだ少ないと考えられます。そして、私は、自身の経験と知識を活かし、外国人起業の成功に寄与できるよう、努力をしたいと思っています。

直接的なアドバイスをするだけでなく、私は現在、独自の経営コンサルタントの視点から経営・成長に関連する知識を共有するウェブサイトを構築しています。このウェブサイトでは、ビジネスの立ち上げや経営、内部統制、そしてビジネスの成長と拡大に関する有益な情報を提供しています。スタートアップ企業へのコンサルティングや日々の業務から学んだ貴重な教訓を共有しています。

私はこのウェブサイトを運用することで、コミュニティにとって有益な情報源となり、起業を計画しているまたは既に起業しているビジネスオーナーが、経営管理と成長戦略について効果的に理解し、成功に近づけることを願っています。

メッセージ

 私は、意欲的で能力を持っている人を多く見てきましたが、さまざまな理由で企業でのキャリアを追求しないことがあります。社会がよりオープンで多様になると、多くの人が大手企業でキャリアを築くことよりも起業する道を選ぶでしょう。

私は日本の未来に信頼を寄せています。この国では起業を含め、誰にでも機会が提供されています。自分の貢献を通じて、日本に住む外国人がビジネスや起業の機会をより多く掴めるようにしたいです。これは私にとって重要なことであり、この目標に対して積極的に取り組んでいきたいと思っています。

数年間の生活の中で、私は一般企業や大手企業でキャリアを築くことができ、今は自分の人生を自由にコントロールし、コミュニティに貢献したいと考えています。

東京、2023年7