レ・ティ・トゥー・チャン

LE THI THU TRANG

Profile & Message

2008年8月 ハノイ貿易大学 卒業

2008年10月   日本に留学 事業創造大学大学院 入学 

20109   事業創造大学大学院卒業後、大阪で半年就職活動を行う

2011年2月 東京都内の貿易会社へ入社

20113   東日本大震災の影響でベトナムへ帰国

2011年6月  再来日 海外調査支援員として北海道根室市役所に入所~ 根室市での生活がスタート ~

異文化の良いところを理解することで、その文化との距離が縮まりました。

異文化の中で、積極的な考えを持ち、自分の好きなことをすると、文化の異なる人たちとの距離も縮まると思います。

根室との縁

5年前、新潟の大学院を卒業した後、就職活動を行いました。多くの会社を回り大変でしたが、東京にある貿易会社に入社することができました。生活費を節約するため、千葉県に引越し、千葉県から東京の職場へ通っていましたが、片道2時間かかり、毎日通勤に4時間ぐらいかかっていました。2ヶ月が経ち、生活も落ち着いてきましたが、毎日通勤電車に乗り込み、夜遅くまで仕事をすることを繰り返すサラリーマン生活が、自分には合っていないと感じるようになりました。

  また、ちょうどその頃、東日本大震災が起こりました。ベトナムでも福島原発事故のニュースが毎日のようにマスメディアに取り上げられ、それを目にして心配したお母さんから、「危ないから早く帰ってきなさい。」と、毎日何十回も電話がありました。

入社して間もないので、本当に申し訳ないと思っていましたが、娘の安否を心配するお母さんを放っておくこともできず、悪いと思いながらも帰国すること決意しました。


  ベトナムへ帰国して数ヵ月後、ある先輩から北海道根室市での海外調査支援に関わる仕事(根室市の水産物をベトナムやアジア地域へ輸出するサポート)を紹介してもらいました。北海道は原発事故の影響が少ないこともあり、私は再び来日して、根室で生活することにしました。

  根室市は札幌市から約400キロ、他の市からも約100キロ離れた小さな町で、当時人口はわずか27万人でした。電車とバスは走っていますが、本数が非常に少なく、根室に住んでいる外国人の主な交通手段は、自転車です。北海道の他の地域と比べると、気温は比較的下がらない方ですが、冬になると風が強く暴風雪も頻繁に起こり、ベトナム人とってはとてもとても厳しい環境です。交通が不便で、天候も厳しく、賑やかな町ではありません。およそ外国人がイメージする日本の生活環境とはかけ離れていましたが、この町で私の日本での新生活が始まりました。

根室での生活

私は根室市で生活する初めてのベトナム人になりました。一人の外国人が市役所の支援部で働くということが、まるで大きなイベントのように新聞に取り上げられました。そして、その記事を書いてくれた記者の方が、根室の生活や文化、周りの知り合いの人を私に紹介してくれました。

 根室の人はとても親切で、優しいです。よく家に招かれ、サンマロール寿司や、新鮮な水産物が入った茶碗蒸し等、様々な根室の美味しい料理をごちそうしてくれます。

 料理の見た目も美しく、味もとても美味しい料理に魅力を感じて、自分でも作ってみたいと思い、日本料理を勉強し始めました。初めて作った日本料理は、当時最も気に入っていた昆布と鰹節から作られた茶碗蒸しでした。ごちそうしてくれた茶碗蒸しの味を思い出しながら、インターネットで見つけたレシピに沿ってみましたが、自分が味わった味に近づくまでに何回も作り直して、どうにか成功しました。

茶碗蒸しの成功をきっかけに、刺身の切り方やサンマロール寿司の作り方など他の日本料理にもチャレンジし、日本料理を作ることがますます楽しくなりました。

 また、週末に水産市場で買い物をすることも私の趣味の一つになりました。市場では新鮮な魚を自分で選ぶことができ、魚を売っているおばあさんやおじいさんから、魚の特徴や、獲れる時期、美味しい調理方法等、色々と教えてもらっています。そして、ここで教えてもらったことは、仕事にも活かされています。

  色々な日本料理が作れるようになってからは、作った料理の写真をFacebookにアップロードして、根室の食文化と新鮮な水産物を紹介することも楽しみの一つになりました。アップロードされた写真を見て、日本料理の魅力を更に感じたと言ってくれたお友達や、根室の魚に興味を持ってくれたお友達もいて、とても刺激になりました。

 そして、それらの料理の写真は自分が担当している仕事のマーケティング資料としても活躍しています。自分で撮った写真を使うことで、著作権を気にする必要はなく、ベトナム企業へより分かりやすく水産物の魅力を伝えることができています。

…..

   根室に引っ越してからあっという間に4年が経ちましたが、今では160名くらいのベトナム人が根室に住んでいます。皆、20~30歳と若く、毎日水産加工場で頑張って働いています。高層ビルもなく、大きなショッピングモールもない根室ですが、空気も綺麗で自然環境がとても良いです。そして、なにより美味しい食べ物がいっぱいあります。

  この地方の親切な人たちに囲まれて、ゆったりとした生活をおくりながら、根室の食文化や、日本の文化を毎日ワクワクしながら体験しています。

北海道 2015年10月