ファム ・ タン  ・ ホアン

   PHAM  THANH  HOANG

Profile & Message

2012年6月:      ベトナム食品産業短期大学 卒業

2012年9月:      福岡の日本語学校に留学するため来日

2014年4月:      翻訳通訳専門学校へ進学

2015年3月:      結婚

2016年4月:      HSC 商社に入社

2017年11月:      福岡でベトナム食品店をオープン

2021年9月:      九州に大規模なベトナム・アジア食品店をオープン

2022年:          HSC独自の日本市場向け即席麺ブランドを立ち上げる

どうか今後もベトナムコミュニティの中で、より多くの方が起業という夢に踏み出して、ベトナムの素晴らしい商品とサービスを日本に届け、ベトナムという国のブランドをたくさんの方に知っていただきたいと思います。

貿易の仕事との縁

2012年にベトナムの食品産業短期大学を卒業した後、すぐに就職するのではなく、他国で経験を積むために留学を決意しました。 その際に考えられる留学先の選択肢の中で、必要な初期費用がそれほど高くなく、語学の要件が厳しくないこと、親戚がいることなどから日本を選択することにしました。私の親戚は日本に長く住んでおり、日本に会社を持っています。

私は親戚と同じ九州に住んでいますが、それほど近いわけではないので、最初に来たときは一人暮らしに慣れる必要がありました。そのため、野菜工場や製麺所、韓国料理店でアルバイトをし、海外の友達を作ることもできました。 1年半の語学学校を終えた後、福岡にある東京国際ビジネス専門学校(翻訳・通訳専攻)に進学し、親戚の家の近くに引っ越しました。

私の叔父も叔母も、縁があって過去のVoice of Asean Senpai に登場しています。

もし興味があれば、叔父と叔母の起業家としての人生に関する記事を読むことができます。

Asean Senpai Vol 17 - Vu Thu Ha 

Asean Senpai Vol 54 - Do Phu Son 

親戚の家の近くに引っ越してから、バイトを辞めて、叔父と叔母が経営する商社であるHSC Japan でバイトをしました。 当時、会社はまだ設立後数年しか経っていなかったので、大手パートナーと協力することができず、ベトナムへ商品を輸出する必要があるたびに、私は日本のスーパーマーケットや大手代理店で商品を購入し、コンテナに詰めてハノイまで発送するという業務を行っていました。 おむつや粉ミルクから家庭用製品に至るまで、ベトナムのお客様が必要とするあらゆる商品を当社の日本の商品に特化したお店で販売しています。

ベトナムに輸出するための商品購入や、コンテナの梱包作業に加え、私は叔父から日本の企業で出た廃棄物を回収する業者と、ベトナムでリサイクルする業者とのマッチング業務も任されました。私は、日本のスクラップ倉庫がリサイクル(例えば、人々がよく使うビニール袋のリサイクル)のためにスクラップを購入する必要があるベトナムの顧客を探すサポートや、両者間の交渉、取引、輸送手順をサポートすることで、手数料をいただいていました。

もちろん上記の仕事は一人でやっているわけではなく、叔父と叔母、そして会社の皆さんの協力がありました。 しかし、HSC Japanでのアルバイトを通じて、私は両国間のビジネスと貿易について多くのことを学び、経験したことで、取引について興味を持ちました。 この会社は成長するのにとても良い環境だと感じたので、2年間の専門学校での勉強を終えた後、就職活動はせずに叔父の会社に入社することに決めました。


福岡でベトナム食品店を開業

正社員として入社してからも、引き続きアルバイト時代から担当していた業務にあたっていました。もちろん仕事の幅は少し広がりました。

私は日本とベトナムの輸出入に関わる仕事をしているので、両国を行き来する機会も非常に多いです。 当時、福岡にはまだベトナム料理を扱うお店がなかったので、ベトナムに帰る機会があるたびに、いろいろなものを抱えて日本に戻ってきていました。 春雨麺のような乾物や魚介類は持ち込むことができますが、肉類は持ち込むことができません。 そのため、ベトナム料理が食べたくなるたびに、Facebookで東京のベトナム食品店に注文をし、発送してもらう必要があります。

福岡ではベトナムの食品が手に入りにくいので、自分も含め周りのニーズも多いことを知りました。そのため、試しに福岡で販売をしてみようと思い、始めてみました。当時はまだ、お試しだったので、商品も少なく、お客様への配送も自分たちで行いました。 お客さんがチリソースを1本しか買わないこともありますが、そんな時も私がお届けに行っていました。 そんな感じで4〜5ヶ月ほどお試し販売をしてみたところ、かなりの売り上げがあり、毎月順調に売上が伸びていたので、上司である叔母に提案し、出資をお願いすることにしました。叔母はその計画が実現可能であると判断し、出資に同意してくれました。私と叔母で100万円ずつ出資し、福岡エリア初のベトナム食品店「HSC Station」が誕生しました。

オープン当初はまだ東京の大手ベトナム食品店からの輸入が主で、商品もそれほど豊富ではありませんでした。 しかし、オープンからわずか1〜2日で混雑するほどお客さんが殺到しました。 おかげさまで、開店から1年未満で出資金を全て回収することができました。

お店の営業も軌道に乗り、福岡に来るベトナム人も日に日に増えていることから、HSC Station をチェーン展開することにしました。 私1人ですべての店舗を運営することはできないので、古い友人たちに連絡を取りました。その中には別の会社で働いている人もいますし、ベトナムにいる人もいます。皆の協力のおかげで、2019 年と 2020年に2店舗拡大しました。その後も経営管理ビザで日本に滞在したい人たち数名が、フランチャイズ形式で出店するために、ビザや店舗設立、輸入元のサポートなどを行いました。

HSC Station 開店日

事業拡大

 ベトナム食品チェーンが軌道に乗った後、会社の仲間たちともう一つの大きな夢である、九州最大のアジア食品店をオープンするという大きな夢に乗り出しました。

 中国や韓国の食品も提供する大規模な店で、日本人や韓国人、中国人のお客様もターゲットにしています。 この店をオープンしようと思った理由は、Amazonや楽天などでベトナム・韓国・中国の食品サイトのコメントを読んでいると、日本人も購入していることが分かりました。しかし、HSC Station の店舗に訪れる日本人のお客様はそれほど多くありません。今のお店の規模だと、日本人はお店に入りにくく、買い物もしずらいのだと思い、もっと大規模な店にして、アジアの食品を幅広く取り扱うことで、より多くのお客様に訪れてもらえると考えました。

 しかし実際に始めてみると、多くの困難に直面しました。 以前はHSC Station の各新店舗の設営には数日しかかかりませんでしたが、今回のお店は大規模なため、完成までにほぼ1ヶ月かかりました。 HSC Station の5倍の規模なので、準備すべき商品も大量でした。 また、日本人、中国人、韓国人をターゲットにしているため、PR方法もこれまで通りではなく、工夫する必要がありました。 これまではベトナム語の Facebook での宣伝だけで良かったが、今度はターゲットが多いので Instagram や Wechat など、他のプラットフォームで のPRにも挑戦しなければなりませんでした。同僚たちと、何ヶ月もかけて準備してきた努力が報われて、開店初日にはたくさんの中国人のお客さんが来店してくれました。日本に来て10年経ちますが、これほど多くの中国人が集まる光景を見たのは初めてです。

 約2年間で、アジア食品店「アジアの駅」も軌道に乗りました。 さらなる事業拡大のため、日本のECサイトである楽天にも出店しました。 これまで、ほとんどの同僚がオフラインでの販売業務しかしてこなかったので、オンラインで食品を販売することは私たちにとって新たな挑戦でした。なぜなら、食品をオンラインで販売する場合、食品の成分に関する多くの情報を記載しなければならないからです。例えば、防腐剤が含まれているか、アレルゲンが含まれているかなどがあります。これまで、商品のラベル表示はそこまで細かく記載することはありませんでした。スムーズに進めるため、たくさん学びました。

アジアの駅 店内

アジアの駅 開店日

アジア食材店 アジアの駅外観

より多くの人にベトナム食品を届ける

フランチャイズ店舗とアジアの駅の開店で、事業が拡大し、2021年からは東京からの食品輸入ではなく、直接ベトナムからのビジネス輸入を行う方針に移行していきました。

理由は、コロナ禍でベトナムへ帰国できない状況が続き、ベトナムからの輸入品のニーズがさらに高まっているため、より積極的にこの事業に取り組みたいと考えたからです。 私の会社は、日本とベトナムの貿易に長年携わっており、以前はベトナムでのパートナー探しを専門とする商社を経営しており、物流分野での経験と人脈があるため、仕入れのためのベトナム企業を探すことは苦労しませんでした。倉庫も持っていて、輸入するためのノウハウは全て揃っていたので、もういつでもできる状態でした。

思いついたら即行動です。私と同僚たちはすぐにこの大きな計画に着手しました。 始めは大変なこともありましたが、現在ではベトナムから商品を正規輸入できるようになりました。 HSC Stationやアジアの駅の店舗用の商品を確保するほか、過去に弊社が輸入していた提携先店舗への逆販売も可能になりました。

輸入を積極的に行い、全国への流通を拡大するとともに、今年初めには日本市場向けの即席麺のブランドを立ち上げ、新商品「HSC」の発売も開始しました。 私の夢は、ベトナム食品を多くの日本人に届けることです。ベトナム国内で生産、販売された即席麺は、日本では販売できないような基準が多くあります。

そこで私は、ベトナムの企業と交渉して、イオン、ドンキホーテなどの日本の大手スーパーマーケットチェーンで販売できる、日本市場向けの麺類を生産することにしました。

この即席麺ブランドは誕生して数カ月で、一部の日本のスーパーマーケットで販売を開始し、楽天でのオンライン販売も開始しています。ベトナム人と日本人、両方のお客様からのフィードバックをいただきながら、商品を徐々に改善し、今後さらに良いものを届けられたらと考えています。

HSCの日本市場向けの即席麺のブランド

メッセージ

 ここ数年、日本在住のベトナム人コミュニティが広がっているので、同時に起業のチャンスも広がっています。起業するには、資本金や知識、経験、そしてやる気と覚悟など様々なことが必要です。多くの壁にも直面しますが、自信と野望を持っていれば、全ての課題を乗り越えることができるはずです。行動しながら学んだり、一歩ずつ積み重ねていけば、必ず報われます。

 どうか今後もベトナムコミュニティの中で、より多くの方が起業という夢に踏み出して、ベトナムの素晴らしい商品とサービスを日本に届けて、ベトナムという国のブランドをより多くの方に知っていただきたいと思います。

福岡、2023年6